第32回 利益分割法(PS法):記事まとめ
今回は「利益分割法(PS法)」シリーズの記事をまとめてお伝えします。
Table of Contents
1. 利益分割法(PS法)とは
このシリーズでは、まず、「利益分割法(PS法)とは」というところを確認しました。
もっともわかりやすい寄与度利益分割法を念頭に置くと、利益分割法とは、要するに「利益配分がちょうど貢献度に等しくなるような取引価格を算定する方法」です。
ちなみに、同じく営業利益を使うTNMMとの違いは、以下の記事で簡単に触れています。
第10回 利益分割法(PS法)と取引単位営業利益法(TNMM)の使い分け
2. 利益分割法(PS法)における3類型
利益分割法には、以下の3つの類型があります。
① 比較利益分割法
② 寄与度利益分割法
③ 残余利益分割法
それぞれの内容は、以下の記事にまとめました。
第3回 「比較利益分割法」をわかりやすくいうと(移転価格税制)
第4回 「寄与度利益分割法」をわかりやすくいうと(移転価格税制)
第6回 「残余利益分割法(RPSM)」をわかりやすくいうと(移転価格税制)
3. 分割対象利益等と分割要因
利益分割法における計算要素は、主に「分割対象利益等」と「分割要因」です。
「分割対象利益等」を計算して、それを「分割要因」で分割する感じですね。
それぞれの内容は、以下の記事で確認しています。
第8回 利益分割法(PS法)における「分割対象利益等」とは
第11回 利益分割法(PS法)における「分割要因」とは
4. 寄与度利益分割法
利益分割法のうち、①比較利益分割法はいいとして、②寄与度利益分割法と③残余利益分割法については、ケースの形で確認しました。
このうち、②寄与度利益分割法は、シンプルに言うと、「国外関連取引に係る分割対象利益等を、それぞれの寄与度に応じて配分することにより独立企業間価格を算定する方法」です。
寄与度利益分割法においては、比較対象となる非関連者間取引を見いだす必要がなく、これが寄与度利益分割法の長所といえますが、このような観点から、寄与度利益分割法が使われる2つのケースを確認しました(以下の記事です)。
第14回 ケース:寄与度利益分割法を使う場合(寡占市場)
第15回 ケース:寄与度利益分割法を使う場合(規模の経済性)
5. 残余利益分割法(RPSM)
もう1つは、③残余利益分割法です。
残余利益分割法(RPSM)を一言でいうと、「国外関連取引に係る全体の利益を基本的利益と残余利益等に分け、それぞれを別の基準で配分することにより独立企業間価格を算定する方法」です。
この残余利益分割法をよく使うのは、自社と国外関連者の両方が重要な価値のある無形資産を持っている場合、もう少しちゃんと言うと、国外関連取引の両当事者が無形資産を使用するなど、独自の機能を果たすことにより、両当事者者による独自の価値ある寄与が認められる場合です。
この残余利益分割法(RPSM)については、計算プロセスやケースも含めて、様々な内容を見てきました(以下の記事です)。
第16回 残余利益分割法(RPSM)の計算例
第17回 残余利益分割法(RPMS)における「独自の機能」とは
第18回 ケース:残余利益分割法(RPSM)を使う場合
第19回 残余利益分割法「に準ずる方法」とは
第20回 ケース:残余利益分割法(RPSM)における分割対象利益等の算出プロセス
第21回 利益分割法(PS法)における共通費用の取扱い
第22回 ケース:残余利益分割法(RPSM)における基本的利益の計算プロセス
第24回 残余利益分割法(RPSM)における残余利益等の分割要因
第25回 ケース:残余利益分割法(RPSM)における残余利益等の分割要因
6. LSA(ロケーション・セービングやマーケット・プレミアム)の取扱い
このシリーズでは、国税庁が出している情報以外の情報の解説も少し要素として入れました(このブログの趣旨に反しますが)。
具体的には、LSAについてです。
LSA(Location-Specific Advantage)は、直訳すると「地域固有の優位性」であり、ある地域に固有の市場の特徴や生産要素で、企業が他の地域で事業を行うよりも良い財務上の結果をもたらすものといえます。
LSAとして代表的なのは、ロケーション・セービングやマーケット・プレミアムですが、それぞれが関係しているケースを確認しました(以下の記事です)。
第27回 移転価格税制におけるLSA(ロケーション・セービングやマーケット・プレミアム)
第28回 ケース:残余利益分割法(RPSM)におけるロケーション・セービングの取扱い
第29回 ケース:残余利益分割法におけるマーケット・プレミアムの取扱い
7. 利益分割法(PS法)の適用範囲(連鎖する国外関連取引への適用)
最後に、ちょっとだけ、私が個人的に好きなお話をしました。
連鎖する国外関連取引について利益分割法を適用する場合のお話で、「どこまでを利益分割法の対象に含めるべきか」という対象範囲のテーマです。
さわりの部分だけですが、以下の記事で触れています。
第30回 ケース:利益分割法(PS法)を使う場合(連鎖する国外関連取引)
第31回 ケース:利益分割法(PS法)の適用範囲から除外できる取引
8. ローカルファイルの記載事項
「利益分割法(PS法)」シリーズでも、ローカルファイルの記載事項を確認しました
具体的には、ローカルファイルには、「利益分割法を選定した場合におけるこれらの方法により法人及び国外関連者に帰属するものとして計算した金額を算出するための書類」が含まれ、法人及びその国外関連者に帰属する利益の計算の過程を説明する必要があります。
以下の記事がその概要です。
第26回 ローカルファイルの記載事項:利益分割法を用いた場合の計算
あー、長かった。
9. 移転価格税制の英語
このシリーズでも、結構英語のお話をしてきました。
タイトルだけ挙げておくので、もしご関心のある用語があれば、ぜひご確認ください。
第2回 利益分割法を英語でいうと
第5回 寄与度利益分割法を英語でいうと
第7回 残余利益分割法を英語でいうと
第9回 利益分割法(PS法)における分割対象利益等を英語でいうと
第12回 利益分割法(PS法)における分割要因を英語でいうと
第13回 利益分割法(PS法)における寄与度を英語でいうと
第23回 残余利益分割法(RPSM)における基本的利益を英語でいうと
残余利益等とか入れてもよかった気がしますが、めんどくさいのでやめときます。
10. 最後に
長かった「利益分割法(PS法」シリーズもこれでおしまいです。
明日からは移転価格税制を少し離れて、別のテーマにしたいと思います。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。