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佐和周のブログ

移転価格税制

第17回 残余利益分割法(RPSM)における「独自の機能」とは

引き続き「利益分割法(PS法)」シリーズです。

今回も残余利益分割法について。

 

1. 残余利益分割法を使うケース

前回確認したように、残余利益分割法を使うのは、国外関連取引の両当事者が独自の機能を果たすことにより、国外関連取引において、これらの者による独自の価値ある寄与が認められる場合です。

典型的なのは、国外関連取引の両当事者が無形資産を使用して、独自の機能を果たしている場合でしたよね。

例えば、日本親会社が研究開発活動を行う一方、海外子会社が主体的に広告宣伝・販売促進活動を行っている(海外子会社のそのような活動により、高い製品認知度や充実した小売店舗網が形成されている)場合などが考えられます。

このような場合、「基本的活動のみを行う法人」という表現を使って、海外子会社も「基本的活動のみを行う法人よりも独自の価値ある寄与が認められる」という言い方をすることがあります。

2. 基本的活動のみを行う法人とは

だいぶ前ですが、無形資産が「所得の源泉となっているかどうか」という文脈で、「基本的活動のみを行う法人」がキーワードであることをお伝えしました(こちら)。

再度確認しておきますが、「基本的活動のみを行う法人」とは、国外関連取引の事業と同種の事業を営み、市場、事業規模等が類似する法人のうち、「独自の機能」を果たしていない法人をいいます。

必ずしも正確ではないものの、「重要な価値を有する無形資産」を持っていない法人と考えればいいかと思います。

だからこそ、重要な価値を有する無形資産を持っているか、あるいは無形資産が「所得の源泉となっているかどうか」の検討に当たっては、法人または国外関連者の国外関連取引に係る利益率等の水準について、基本的活動のみを行う法人のそれとの比較を行うわけです。

なので、無形資産について描写するときに、その独自性・個別性(ユニークさ)により、「基本的活動のみを行う法人に比較して経済競争上の優越的な立場をもたらし得る」等々の表現をするということで。

基本的活動のみを行う法人は、ある意味で「踏み台」的な位置付けです。

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3. 独自の機能とは

上記でも何度も登場していますが、「独自の機能」いうのも非常によく使う用語です。

ここでいう「独自の機能」というのは、基本的な製造・販売等の活動だけでは生み出すことができない利益の発生に貢献するような機能です。

この先でお伝えしますが、参考事例集における事例でも、「高い」製品認知度、「充実した」小売店舗網、「独自」の技術、「低い」製造原価、等の表現が出てきますが、これらは、すべて基本的活動のみを行う法人との比較において用いている表現といえます。

つまり、「基本的活動のみを行う法人には見られない」という意味で、「独自の」価値ある寄与が行われているという位置付けになります。

今日はここまでです。

これで予備知識は十分なので、次回は、残余利益分割法を使うケースを見ていきたいと思います。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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