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佐和周のブログ

移転価格税制

第11回 債務保証取引(保証料)に対する移転価格税制の適用

引き続き「金融取引」シリーズです。

今回は債務保証取引に対する移転価格税制の適用について。

 

1. 債務保証取引は移転価格税制の適用対象

債務保証取引については、2022年6月の移転価格事務運営要領の改正前は、その取扱いに関する明確な規定はありませんでした。

ただ、従来から、債務保証取引が移転価格税制の適用対象になるということは共通の認識としてありました。というのも、債務保証については、保証する側と保証される側に信用力の差があって、それを前提に信用補完しているわけなので、保証する側としては、対価(保証料)を回収して然るべきだからです。

従来の問題は、「移転価格税制上、保証料の水準をどのように設定すべきか」という点が不明確だったことです。なので、税務調査においても、非論理的かつ不毛な議論が…もごもご

事務運営指針の改正により、この点が明確化されたのは大きいと思います。実際には、ほぼOECDの移転価格ガイドラインと同じなので、もっと前から分かっていたことではあるのですが。

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2. 債務保証等とは

事務運営指針で取扱いが示されているのは、債務保証ではなく、債務保証「等」についてです。

その定義は、一方の者による他方の者の債務の保証「その他これに類する行為」なので、そこで示されているのは、債務保証取引のみを対象にした取扱いではないことがわかります。いわゆる保証類似行為、例えば、キープウェル・アグリーメントみたいなものも、信用補完の内容によっては、含まれるということですね。

ただ、ここからは、法人と国外関連者との間で行われた債務保証取引を中心に考えたいと思います。

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3. 債務保証取引に関する考え方

まず、債務保証取引についても、金銭の貸借取引と同じ金融取引として、比較を行うための諸要素等に基づいて、通貨・時期・期間等の取引の内容を検討する必要があります。

事務運営指針においては、債務保証等について、もう少し具体的に、以下の要素を考慮する必要があるとしています。

(1) 債務保証等の対象である債務の性質及び範囲
(2) 債務保証等が法人または国外関連者に与える影響
(例えば、以下の要素)
①債務保証等の対象である債務の主たる債務者(他方の者)がその債務を履行しない場合、債務保証等を行った一方の者が、他方の者に代わってその履行をする法的な責任を負っているかどうか
②債務保証等により他方の者の信用力が増しているかどうか

(2)の①②は両方とも、そうじゃなかったら困るような気もしますけど、上記のとおり、実際には単純な債務保証以外にも、信用補完の方法には様々なパターンがあるので、判断基準を示しているということかと思います。

具体的な内容としては、①は「銀行等との債務保証契約において、そういう内容が明示されているかどうか」というお話で、法的責任の側面に焦点を当てています。一方、②は「債務保証により、銀行等に対して支払う金利が(保証がなかったとした場合よりも)低くなっているかどうか」みたいなお話で、経済効果の側面に着目しています。

要は、色んな形はあるとしても、債務保証により、法人または国外関連者に影響が生じているのであれば、債務保証の対価のやり取りが必要ですよね、みたいな文脈だと思います。

3. 保証料の算定方法

次に、保証料(独立企業間価格)の算定方法について。

当然のことですが、債務保証取引についても、内部比較対象取引があれば、まずはそれを参照します。

ただし、債務保証取引の場合、現実に行われる取引の中から比較対象取引を見いだすことは難しいケースも多そうです。

そこで、改正後の事務運営指針では、いわゆるイールド・アプローチやコスト・アプローチのほか、信用リスクが同じくらいのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドを参照する方法を示しています

具体的には、債務保証取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合、例えば、以下の事項を勘案して想定した取引を比較対象取引とすることができることとされています。

(1) イールド・アプローチ
債務保証等の対象である債務の主たる債務者が、「債務保証等が行われていないとした場合」と「債務保証等が行われた場合」のそれぞれにおいて、債権者に対して支払うべき利息等に係る利率等の差
…要は、保証料の算定にあたり、債務保証なしの場合とありの場合の利率差をベースにする方法です
(2) コスト・アプローチ
債務保証等の対象である債務の不履行が生ずる場合に、債務保証等を行った者が負担するべき損失の額(債務の不履行が生ずる確率を勘案して算定される損失の額)の債務の額に対する割合
…要は、債務保証の対象である債務のデフォルト確率を勘案して算定した期待損失(率)をベースにする方法です

これら2つのアプローチについては、次回もう少し書きます。

また、(3)クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドを参照する方法(以下)も認められています。

「一方の者が金銭を支払い、これに対してあらかじめ定めた第三者の信用状態に係る事由(債務の不履行等)が生じた場合に、他方の者が金銭を支払うことを約するデリバティブ取引」に係るスプレッドのうち、債務保証等の対象となる債務に係る信用リスクと同様の信用リスクに相当するもの

国税庁がどう整理しているのかよくわかりませんが、これも(2)コスト・アプローチの1つと整理していいと思います。

今日はここまでです。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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