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佐和周のブログ

移転価格税制

第15回 ケース:寄与度利益分割法を使う場合(規模の経済性)

引き続き「利益分割法(PS法)」シリーズです。

前回と同様、寄与度利益分割法のケースを取り扱います。

寄与度利益分割法は、シンプルに言うと、「国外関連取引に係る分割対象利益等を、それぞれの寄与度に応じて配分することにより独立企業間価格を算定する方法」であり、比較対象となる非関連者間取引を見いだす必要がないという長所があります。

 

1. 寄与度利益分割法を使うケース(参考事例集)

前回のケースでは、X国市場が寡占の状況にあり、比較対象取引を見いだすことが困難な状況ということで、寄与度利益分割法を使うケースでした。

今回は、それとは異なる理由で寄与度利益分割法を使うケースを見てみます。参考事例集の事例7(前提条件3)です。

2. ケースの前提条件

まず、ケースの設定は以下のとおりです。

(1) 登場人物

日本親会社:製品Aの製造販売会社
海外子会社:製品Aの製造販売子会社(X国)
製品A:独自の製造技術等は用いられておらず、その販売価格は国内・X国ともに他社の類似製品と同程度

(2) 国外関連取引の内容

  • 海外子会社は、日本親会社に対して製品A用の半製品aを販売し、日本親会社は、海外子会社から購入した半製品aに加工(製品A製造の後工程)を施して製品Aの製造を行い、国内の第三者の代理店に販売している

(出典:国税庁 移転価格事務運営要領 「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」)

(3) 日本親会社の機能・活動等

  • 日本親会社は、独自性のある広告宣伝・販売促進活動は行っておらず、販売に当たり自社の商標等を使用することもない

(4) その他(製品Aの原材料の買付け)

  • 製品Aの製造に必要な原材料については、長期的かつ大量に一括買付けすることにより、日本親会社及び海外子会社は、他社よりも著しく有利な価格で購入することができる
  • なお、原材料の買付けに当たり日本親会社及び海外子会社は独自の機能を果たしていない
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3. 移転価格税制上の取扱い

このケースについて、移転価格税制上の取扱いは以下のとおりです。

(1) 独立企業間価格の算定方法の選定

寄与度利益分割法が最も適切な方法

(2) なぜなら

海外子会社または日本親会社のいずれか一方を検証対象とする算定方法を用いた場合は適切な調整ができず、他方の当事者に対し、その機能に見合わない過大な利益が配分されることになるから

(3) 比較可能性分析

  • 日本親会社及び海外子会社はともに製品Aに係る製造販売機能を果たしているが、その程度に大きな差は認められないことから、検証対象として両者のうちどちらを採用しても適切である
  • 日本親会社及び海外子会社が行う取引からは、内部比較対象取引の候補は見いだせない
  • 公開情報からは、基本三法及び基本三法に準ずる方法を適用する上での外部比較対象取引の候補を入手することはできない

(4) TNMMは使えないのか

  • 日本親会社を検証対象とする取引単位営業利益法及び海外子会社を検証対象とする取引単位営業利益法を適用する上での外部比較対象取引の候補を見いだすことはできる
  • しかしながら、外部比較対象取引の候補を用いて、日本親会社を検証対象とする場合と海外子会社を検証対象とする場合の独立企業間価格の暫定値をそれぞれ求め、これに基づき両者の間の利益配分状況を確認すると、それぞれの場合において検証対象でない他方の当事者に過大な利益が配分されることになる
  • その要因は、日本親会社及び海外子会社が製品Aの原材料を他社より有利な価格で購入することにより生じた利益が、日本親会社または海外子会社のいずれか一方のみに配分されることによるものである
  • また、その有利な価格で購入することにより生じた利益は、日本親会社及び海外子会社が併せて大量に一括買付けすることにより生じた規模の利益である
  • 上記より、日本親会社及び海外子会社が、原材料を他社より有利な価格で購入できることが取引単位営業利益法の利益指標の算定に影響を及ぼしており、かつ、その影響が軽微ではないが、差異の調整は困難と考えられる
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4. 少しだけコメント

このケースでは、一見取引単位営業利益法(TNMM)が使えそうなのですが、それを使ってしまうと、原材料購買に係る規模の経済性が反映されない(検証対象でないほうに利益が多く配分されてしまう)という問題が生じます。

このように、国外関連取引に規模の利益や事業の統合による効率性の向上によって得られる利益等が生じている場合には、国外関連取引の当事者のいずれか一方を検証対象とする算定方法では適切な利益配分ができないことがあります。

そういうケースでは、利益分割法の適用が適切という結論になりやすいと思います。

今日はこのあたりで。寄与度利益分割法を使うケースを2つお伝えしたので、次回から残余利益分割法のお話に移ります。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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