第17回 金融取引:記事まとめ
今回は「金融取引」シリーズの記事をまとめてお伝えします。
Table of Contents
1. 移転価格事務運営要領の改正
このシリーズは、2022年6月の移転価格事務運営要領(事務運営指針)の改正のお話から始めました。
第1回 移転価格事務運営要領の改正と金融取引に対する移転価格税制の適用
日本独自の改正というよりは、OECDの移転価格ガイドラインに整合させるための改正ですが、金融取引の取扱いについては、これによって結構様変わりしたので。
2. 金銭の貸借取引
金銭の貸借取引(親子ローン)については、従来の日本特有の考え方が無くなっており、端的には、改正後は、普通に比較対象取引を探したり、借手側の信用格付を使ったりする必要があります。
逆にいうと、従来のように(借手側ではなく)貸手側の調達レートや国債等による運用の利率をベースに金利設定することはできなくなりました。
また、これも密かに影響が大きそうですが、銀行などに見積金利(やスプレッド)を照会して、それをベースに金利設定するのも(一応は)アウトになっています。
このあたりは、以下の記事にまとめてあります。
第2回 金銭の貸借取引に対する移転価格税制の適用(親子ローンの金利設定)
第3回 銀行等に照会した金利で親子ローン金利を設定することの可否(移転価格税制)
第4回 金銭の貸借取引における信用格付等の位置付け(移転価格税制)
第8回 親子ローンの通貨及び対応する金利の問題(移転価格税制)
あと、参考事例集の事例として、信用格付を用いて、信用力の比較可能性を検討するケースにも触れました。
第9回 ケース:信用格付を基礎とする親子ローンの金利設定(移転価格税制)
3. 債務保証取引
債務保証取引については、従来は事務運営指針に特段の規定がありませんでしたが、改正により、移転価格税制上の取扱いが明確化されています。
事務運営指針の改正で明らかになったのは「保証料の水準をどのように設定すべきか」という点であり(実際には、OECDのガイダンスがあったので、もっと前から分かってはいましたが)、具体的には、いわゆるイールド・アプローチやコスト・アプローチなどが示されています。
このあたりは、以下の記事にまとめています。
第11回 債務保証取引(保証料)に対する移転価格税制の適用
第13回 保証料率算定時のイールド・アプローチとコスト・アプローチ(移転価格税制)
あと、参考事例集の事例として、独立企業間の保証料について、イールド・アプローチによる計算結果とコスト・アプローチによる計算結果を平均する形で算定するケースにも触れました。
第14回 ケース:CUP法で保証料率を設定する場合(移転価格税制)
4. セーフ・ハーバー
金融取引について、個人的には、セーフ・ハーバーがあったらいいのになあと思います。ほとんど意味のない分析に時間と手間(とコスト)をかけるのはもったいないので。
ただ、結論として、金融取引についてセーフ・ハーバーはありません(以下の記事にまとめてあります)。
第16回 金融取引に関するセーフ・ハーバーの有無(というか無)(移転価格税制)
5. 移転価格税制の英語
このシリーズでも、結構英語のお話をしてきました。
タイトルだけ挙げておくので、もしご関心のある用語があれば、ご確認ください。
第5回 信用格付や格付機関を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
第6回 信用力を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
第7回 付随的便益を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
第10回 独立企業間利率を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
第12回 債務保証・保証者・被保証者を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
第15回 保証料&独立企業間保証料を英語でいうと(移転価格税制:金融取引)
6. 最後に
「金融取引」シリーズはこれでおしまいです。
明日からは、また別のテーマにしたいと思います。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。