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移転価格税制

第16回 金融取引に関するセーフ・ハーバーの有無(というか無)(移転価格税制)

引き続き「金融取引」シリーズです。

今日は金融取引に関するセーフ・ハーバーの有無について。結論としては、無いんですけど。

 

1. パブリック・コメントの内容

移転価格事務運営要領の改正案については、パブリック・コメントで「セーフ・ハーバー・ルールを設けるべき」みたいなものがありました。端的には、一定の金額基準を下回る金融取引については、適当な対応でいいんじゃないか、みたいな話です。

というのも、金融取引について、事務運営指針に真面目に対応しようとすると、(フィーの高い)専門家に依頼したり、外から(高い)データを買ってきたり、といった対応が必要になるので、かなりコンプライアンス・コストがかかります。なので、この意見はもっともだと思います。

なお、パブリック・コメントでは、中小企業における対応への懸念も示されていましたが、個人的には大企業でも同じだと思います。意味のある分析ならいいのですが、親子ローン金利やグループ内の保証料の分析にコストをかけてもなあ、というのは多くの人が感じるところだと思います。

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2. セーフ・ハーバーに関する「国税庁の考え方」

個人的には、セーフ・ハーバーがあったらいいなと思うのですが、結論としては、金融取引についてセーフ・ハーバーはありません

この点について、パブリック・コメントに対応する形で示された「国税庁の考え方」は以下のような感じです。

  • セーフ・ハーバー・ルールについては、国外関連取引の対価の額を簡便な方法により算定できる反面、例えば、相手国等との合意がないユニラテラルのセーフ・ハーバー・ルールを導入した場合、二重課税または二重非課税のリスクを引き起こす可能性が懸念される
  • 金融取引に関しては、OECD移転価格ガイドラインにおいても簡便法のガイダンスは示されておらず、企業グループ内役務提供の場合とは状況が異なる
  • ふぅーんという感じです。

    これだけではよくわからないので、もうちょっと見てみます。

    3. よくわからない「国税庁の考え方」

    上記の中小企業における対応への懸念などについて、パブリック・コメントに対応する形で示された「国税庁の考え方」はだいたい以下のような感じです。

  • 独立企業原則は、中小規模の企業及び取引にも等しく適用される
  • したがって、独立企業原則を適用する場合の核心である比較可能性分析に基づき、最も適切な方法により独立企業間価格を算定する必要があるという考え方は、企業及び取引の規模によって変わるものではない
  • これだけだったら納得なのですが、あたかもこの部分が建前であるかのような内容が続きます(以下です)。

  • 改正指針の取扱いは、必ずしも、一律に適用することを意図したものばかりではない
  • 例えば、信用格付等を用いて取引の当事者の信用力の比較可能性を検討する方法(改正指針3-8(2))は、「用いることができる」方法の一例を示したものであり、一律の適用を求めるものではない
  • うーん、「じゃあ、どういう方法があり得るのかな」と思いつつ、続きを読むと、

  • 例えば、法人が取引のある銀行等に照会して取得した見積り上の利率等を基に国外関連取引に係る対価の額を算定している場合であっても、そのこと自体が移転価格税制上の問題となるものではない
  • もっとも、法人が銀行等により照会して取得した見積り上の利率等を基に算定した対価の額は必ずしも独立企業原則に即した結果になっているとは限らないため、独立企業間価格と異なる場合には問題となる
  • なるほど。

    まあ、コストをかけずに、しかもちゃんと理屈の通る形で改正後の事務運営指針に対応するのは難しいですよね。

    で、結論としては、「これらの指針は、法人が過重なコンプライアンス・コストをかけてまで指針上に例として示されている方法により国外関連取引の対価の額を算定することを求めるものではありません」ということです。

    じゃあ、どうしたら…もごもご

    今日はここまでです。

    では、では。

    ■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

     

    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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