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収益認識会計基準の適用で、売上高が減少する3つのパターン

今日は週末なので、雑談です。

 

1. 収益認識会計基準の適用により、売上高が減少する場合

企業にとって、売上高というのは重要な指標です。利益ほど重要ではないかもしれませんが、そもそも売上がなければ、利益の確保すら考えられません。

収益認識会計基準は、文字どおり、収益の認識、つまり売上の計上に係るものなので、収益認識会計基準の適用により、売上高の水準も影響を受けます

ただ、その多くは、売上の計上タイミングの問題に過ぎません。「出荷基準→検収基準」なんかが典型ですが、「いつ」売上を計上するか、というだけの話です。特定の期に着目すると影響があるかもしれませんが、均して見ればほぼ影響はないと思います。

一方で、収益認識会計基準の適用により、売上高が「恒常的に」減少するケースもあります。

こういうタイプのものは、純粋に「売上高が減少する」という見栄えの問題のほか、「売上高営業利益率などの財務指標が過去と連続しなくなる」というめんどくさい問題も引き起こします。

今日はこの「売上高が恒常的に減少する」ケースについて考えてみたいと思います。

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2. 売上高が恒常的に減少するケース

収益認識会計基準の適用により、売上高が恒常的に減少するパターンは、だいたい損益科目間の振替の問題です。

例えば、契約に重要な金融要素が含まれる場合、金融要素の影響を区分して(受取利息などで)処理すれば、その分だけ売上高は減少します(マイナーな話だと思いますが)。

同じく、売上高と売上原価を相殺処理(つまり、純額処理)したり、販管費を売上高からの減額処理に変更したりしても、売上高は減少します。

今回は、売上高が恒常的に減少するパターンについて、具体的に以下の3つを見ていきます。

(1) 本人/代理人の問題
(2) 顧客に支払われる対価(リベートなど)の取扱い
(3) 有償支給取引の取扱い

最初にお断りしておきますが、このブログの内容はすべて単なる雑記で、内容については、何も調べずに書いています(この記事に限らず、普段からそうですけど)。

なので、これを網羅的なものとしては捉えないでください(重要な金融要素の例は挙げましたが、たぶん他にも色々あると思います)。単に、実際にご相談を受けたことがあるものを列挙しただけなので。

ということで、始めます。

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(1) 本人/代理人の問題

収益認識会計基準の適用により、売上高が恒常的に減少するパターンとして、まずは、企業が「代理人」としての収益認識を求められるケースがあります。

従来の会計処理と比較した場合の「売上高の減少の仕方」を仕訳の形で表すと、以下のような感じですね。

(借)売上高 XXX (貸)売上原価 XXX

端的には、売上高と売上原価の「総額」計上が「純額」計上に切り替わります。

例えば、商社などについて、「IFRSの適用により、売上高が激減する」みたいな話は昔からありましたが、それと同じ話ですね。

一般にある取引として、企業が代理店的な位置付けで、手数料見合いを得る取引なんかが典型だと思います。以下は実際の注記ですが、「代理店手数料」という呼び方がシンプルでわかりやすいと思います。

代理店として販売している商品・サービスについては、代理店手数料に相当する純額を売上として計上しております。

以下、ちょっと整理してお伝えします。

①自社は「本人」か「代理人」か

まず、この話は、収益認識会計基準や適用指針上の言い方でいうと、「顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合」のお話です。

他社の製品が自社をスルーして顧客に販売されている場合をイメージして頂ければいいと思いますが、そういう取引について、顧客との約束が当該財又はサービスを…

●自社が自ら「提供」する履行義務であると判断される場合
➡ 自社は「本人」に該当
●他社による提供を自社が「手配」する履行義務であると判断される場合
➡ 自社は「代理人」に該当

財又はサービスが顧客に提供される前に、自社が当該財又はサービスを支配しているときには、自社は本人に該当し、支配していないときには、代理人に該当するとか、そういう抽象的な話ですね。私はあまり興味ないです。

②自社が「本人」該当するときの収益認識

上記の判断の結果、自社が「本人」に該当すれば、普通に総額で(仕入と)売上を計上します。難しくいうなら、「財又はサービスの提供」と交換に得る「対価の総額」を収益として認識します。

仕訳だとこんな感じですね(数字は適当)。

(借)現金及び預金 100 (貸)売上高 100
(借)売上原価 90 (貸)現金及び預金 90

③自社が「代理人」に該当するときの収益認識

一方、自社が「代理人」に該当すれば、仕入との純額で売上を計上します。要は純額部分(手数料見合い)だけが自社の収益だということですね。難しくいうなら、「他社により提供されるように手配すること」と交換に得る「報酬または手数料の金額」を収益として認識します。

よく例として挙がるのは、百貨店などの小売業における消化仕入(顧客への販売と同時に仕入先からの仕入が計上されるもの)でしょうか。

めちゃくちゃシンプルに仕訳にすると、こんな感じです(数字は上と同じ前提)。

(借)現金及び預金 10 (貸)売上高 10

自社が「本人」に該当するときの仕訳で、「売上原価」を「売上高」と相殺して純額にすると、この仕訳になります。

④収益認識会計基準の適用による影響

もともとは「本人」の位置付けで、総額で売上高及び売上原価を計上していた場合で、収益認識会計基準の適用後は「代理人」の位置付けに変更になるケースでは、売上高(と売上原価)が減少する形になります。

以下の注記のような感じですね(収益認識会計基準を早期適用している企業の実際の注記です)。

収益認識
会計基準等の適用に伴い、他の当事者が顧客への財又はサービスの提供に関与している場合において、企業は、自らの約束の性質が、特定された財又はサービスを自ら提供する履行義務(すなわち、企業が本人)であるのか、それらの財又はサービスが当該他の当事者によって提供されるように手配する履行義務(すなわち、企業が代理人)であるのかにつき検討いたしました。これにより、●●事業の一部を除く取引、●●事業の全ての取引、●●事業における一部の取引につき、収益の認識を総額から純額へ変更することとしました。この結果、従前の会計処理方法と比較して、当連結会計年度の連結損益計算書において売上高および売上原価はそれぞれ○○千円減少し、…

もう1つ、同じような感じですけど。

代理人取引に係る収益認識
主に●●事業における国内流通事業に係る収益について、従来は、顧客から受け取る対価の総額を収益として認識しておりましたが、顧客への商品の提供における当社の役割が代理人に該当する取引については、顧客から受け取る額から商品の仕入先に支払う額を控除した純額で収益を認識する方法に変更しております

これらの注記のとおりですが、このパターンについて、収益認識会計基準の適用による「売上高の減少の仕方」を仕訳の形で再度確認すると、以下のような感じですね。

(借)売上高 XXX (貸)売上原価 XXX
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(2) 顧客に支払われる対価(リベートなど)

次に、収益認識会計基準の適用により、売上高が恒常的に減少する場合の2パターン目として、販管費処理しているリベートなどが売上高から減額されるケースがあります。

個人的には、リベートはもともと売上高の控除項目として取り扱われていると思っていたのですが、数年前の収益認識会計基準に関する議論をきっかけに、そうではないケースも結構あったということを知りました。

仮に、従来はリベートを販管費処理していたことを前提とすると、収益認識会計基準の適用による「売上高の減少の仕方」としては、以下の仕訳のような感じになりますね。

(借)売上高 XXX (貸)販売費及び一般管理費 XXX

①「顧客に支払われる対価」とは

収益認識会計基準の言い方でいうと、リベートなどは「顧客に支払われる対価」と整理されます。

通常、取引の対価は、顧客から企業へ流れますが、「顧客に支払われる対価」は、逆に企業から顧客に流れるもので、その典型がリベートです(逆にいうと、この話はリベートに限った話ではありません)。

②「顧客に支払われる対価」は、売上高から減額されるか

この「顧客に支払われる対価」は、一定の例外を除き、取引価格から減額することとされています。シンプルいうと、リベートを支払う場合は、売上高から減額するということです(実際に減額するタイミングは、リベートの支払前ですけど)。

ちなみに、例外というのは、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合です。なので、顧客にリベートのようなものを支払っているけど、それと交換に顧客から物品を受け取ったりしている場合には、売上高から減額しません。

③収益認識会計基準の適用による影響

リベートの支払いがある場合、収益認識会計基準の適用前は、「明確な取扱いがなかった」ということになっています(本当にそうなの?とは思いますが)。なので、リベートの支払いについて、売上から減額する場合のほか、販管費で処理する場合もあったようです。

仮にリベートを販管費で処理していた場合、収益認識会計基準の適用後は、売上高から減額する必要があるので、売上高と販管費が同額減少することになります。

以下の注記のような感じですね(これは収益認識会計基準を早期適用している企業の実際の注記です)。

…販売奨励金等の特約店に支払われる対価について、従来、販売費及び一般管理費として処理する方法によっておりましたが、取引価格から減額する方法に変更しております。

このパターンについて、収益認識会計基準の適用による「売上高の減少の仕方」を仕訳の形で再度確認すると、以下のような感じです。

(借)売上高 XXX (貸)販売費及び一般管理費 XXX
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(3) 有償支給取引

収益認識会計基準の適用により、売上高が恒常的に減少する3つ目のパターンとして、有償支給取引のケースがあります。

有償支給取引の会計処理の詳細は、以下の記事に書きました(『この取引でB/S・P/Lはどう動く? 財務数値への影響がわかるケース100』という書籍のご紹介ですけど)。

収益認識会計基準の適用で、有償支給取引の会計処理はどうなるか

 

要点だけ書くと、収益認識会計基準の下では、支給品の買戻義務の有無にかかわらず、有償支給時点では収益は認識されません。

そのため、有償支給取引について、売上高と売上原価を両建てにしている企業がもしまだあれば、売上高は減少することになります。

仕訳としては、以下のような感じですね。

(借)売上高 XXX (貸)売上原価 XXX

またご相談を受けたら追記するかもしれませんが、とりあえず今日はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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