インボイス制度(消費税):国税庁のQ&Aが改訂されました(2022年11月)
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について。
2023年4月のQ&A改訂については、こちらをご覧ください。
Table of Contents
1. Q&Aの改訂
2022年11月25日に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されました。
主な改訂内容について、簡単に書いておきます。
2. 新たに追加されたQ
今回の改訂で新たに追加されたQは以下の11コです。
問31 当社は機械用部品の卸売業者です。販売先の小売業者に対しては、1月ごとに請求書を交付しており、単価や数量誤りなどにより当月の請求金額が変わる場合には、以下のとおり、継続的に翌月の請求書において前月の過少請求又は過大請求分を加減算し調整しています。
以下の請求書について登録番号等を追加することで適格請求書の記載事項を満たす場合において、現在と同様に当月分の請求書で前月分の過少請求等を調整する記載は認められますか。
(値増金に係る適格請求書の交付)
問32 当社の行う建設工事等について、その建設工事等の引渡しの日において当該建設工事等の請負代金に係る請求書を交付しています。一方、建設工事等の請負契約に伴い収受する値増金については、相手方との協議によりその収入すべきことが確定することから、当初交付した請求書とは別に値増金に係る請求書を交付しています。この場合、それぞれ交付している請求書を適格請求書とすることで問題ないですか。
(複数の取引をまとめた請求書の交付)
問57 当社は、複数の事業所がある顧客に対しては、その事業所ごとに契約を締結し取引を行っています。一方、請求書は、以下のように複数の契約をまとめて交付しています。
現在、契約ごとに消費税額等の端数処理を行い、ご請求金額欄における消費税額等はその端数処理をした消費税額等の合計額を記載していますが、令和5年10 月から、この請求書に登録番号を追加すれば適格請求書の記載事項を満たすことになりますか。
(物品切手等を値引販売した場合の適格請求書の記載事項)
問62 当社で主催する演劇の入場券について、一定の販売方法においては、券面金額から一定金額を値引きして販売しています。例えば、12,000円の入場券について、1,000円引きの11,000円で販売しています。このような場合において、当該入場券と引換えに行う演劇に係る適格請求書(又は適格簡易請求書)の記載事項はどのようになりますか。
(提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存方法)
問72 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供しています。提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされていますが、当該電磁的記録がXML 形式等の取引情報に関する文字の羅列である場合、電帳法における保存要件の一つである「整然とした形式及び明瞭な状態」での画面及び書面への出力は、どの程度の表示が求められるのでしょうか。例えば、適格請求書の記載事項を示す文言(例えば、「取引年月日」という文言)も必要となるのでしょうか。
(提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存形式)
問73 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録(PDF 形式)を提供しています。提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされていますが、保存する電磁的記録は、相手方に提供したPDF 形式のものではなく、このPDF形式を作成するための基となったXML 形式の電磁的記録でも認められますか。
(出来高検収書の保存による仕入税額控除)
問87 当社は、請け負った建設工事について、当該建設工事の一部を他の事業者(以下「下請業者」といいます。)に請け負わせています。下請業者に対しては、下請業者が行った工事の出来高について検収を行い、当該検収の内容及び出来高に応じた金額を記載した書類(以下「出来高検収書」といいます。)を作成し、それに基づき請負金額を支払っています。
現在、当該出来高検収書については、下請業者に記載事項の確認を受けており、これを保存することにより仕入税額控除を行っていますが、適格請求書等保存方式において、このような出来高検収書により仕入税額控除の適用を受けることは可能でしょうか。
(短期前払費用)
問88 当社は、法人税基本通達2-2-14 の取扱いの適用を受けている前払費用について、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れとしています。
また、当該前払費用は相手方から交付を受けた請求書等に基づき支払っています。
適格請求書等保存方式において、相手方から交付を受ける請求書等が適格請求書の記載事項を満たすものであった場合、引き続き、当該前払費用について、支出した日の属する課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができますか。
(郵便切手類又は物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れの時期)
問89 当社は、購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自社で引換給付を受けるものについては、継続的に郵便切手類又は物品切手等を購入した時に課税仕入れを計上しています。
適格請求書等保存方式において、引き続き、郵便切手類又は物品切手等を購入した時に課税仕入れを計上しているものについて仕入税額控除の適用を受けることができますか。
(物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れに係る支払対価の額)
問90 当社は、購入した物品切手等により引換給付を受けた場合、当該物品切手等の購入金額を課税仕入れに係る支払対価の額としています。
適格請求書等保存方式においては、物品切手等により引換給付を受ける場合であっても、原則として、適格請求書等の保存が必要とのことですが、引き続き、物品切手等の購入金額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることになりますか。
(外貨建取引における仕入税額の計算方法)
問109 当社は、一部の取引について米ドル建てにより仕入れを行っており、当該取引に係る法人税の処理については、取引を行った日の対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)により円換算を行っており、消費税の処理についても同様としております。
このような場合に、適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法は、どのようになりますか。
特定の業種向けのものだったり、個人的にはあまり興味がないものもありますが、またちょっとずつ新しい記事を書いていこうと思います。
【2022年12月追記】
ちょっとずつ書いています(以下の記事です)。
インボイス制度:外貨建取引に係る仕入税額の計算方法
インボイス制度:短期前払費用の取扱い(適格請求書の入手が遅れる場合)
インボイス制度:継続取引の場合の前月分の適格請求書の修正方法
インボイス制度:複数契約に基づく取引をまとめた適格請求書における端数処理
インボイス制度:税抜対価をベースにした仕入税額の帳簿積上げ計算
インボイス制度:郵便切手類による課税仕入れ(仕入税額控除)の時期
インボイス制度:物品切手等による課税仕入れ(仕入税額控除)の時期
インボイス制度:物品切手等による課税仕入れに係る支払対価の額
インボイス制度:提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存形式と保存方法
インボイス制度:請負工事等の値増金に係る適格請求書の交付
インボイス制度:下請業者が確認した出来高検収書による仕入税額控除
インボイス制度:入場券などの物品切手等を値引販売した場合の適格請求書の記載事項
3. 改訂されたQ
上記の新規追加に加えて、15コのQが改訂されています。
例によって数え間違えているかもしれません。
具体的な改訂箇所について、問84(立替金)は、改訂後はなかなかいい感じで書いてあります(こちらの記事に反映しました)。問108の仕入税額の計算のところも良さそう。
あとは、問98(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項)の自動販売機特例に係る帳簿記載の例なんかも参考になりそうです(こちらの記事に反映しました)。
それ以外では、問24(適格簡易請求書の交付ができる事業)のほか、媒介者交付特例に興味がある方は、問41や問42なんかも参考になるかもしれません。
とりあえずここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。