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佐和周のブログ

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法:令和3年度税制改正後の電子取引の制度

今日は、急ですが、電子帳簿保存法のお話です。

そういえば、移転価格税制の話の途中で、消費税のインボイス制度の話になって、どちらの話もまだ途中なのですが、また話が変わります(いつも読んでくれている人はごめんなさい)。

0. この記事のポイント

2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引については、電子的に受け取った請求書や領収書等をデータのまま保存する必要があります。逆にいうと、紙保存は不可です。電子取引は身近なもので、メールで請求書等をもらえば、それは電子取引に該当します。つまり、この電子取引の制度はかなり対応が面倒なものといえます。

 

 

1. 消費税(インボイス制度)→電子帳簿保存法(電子取引の制度)

今週、消費税のほうで、適格請求書の電磁的記録による提供や保存について書きました(以下の記事です)。

電子インボイス:適格請求書の電磁的記録による提供と保存(売上側)
電子インボイス:適格請求書の電磁的記録による保存と仕入税額控除(仕入側)

そこで電子帳簿保存法にも触れたので、今日は電子帳簿保存法のうち、電子取引の制度について書いてみたいと思います。

2. 電子帳簿保存法における電子取引の制度

前提として、所得税法や法人税法では、取引に関して相手方から受け取った請求書や領収書等、また相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められています。

これ自体は当然のことです。

一方、こういった取引情報を電子取引により授受した場合には、その取引情報に係る電磁的記録を一定の方法により保存しなければならない、というのが電子取引の制度です。

電子取引というと、特別なもののようにも聞こえますが、メール(電子メール)で請求書なんかやりとりしたら、それは電子取引なので、結構身近なもののはずです。

で、令和3年度税制改正が適用される2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引については、電子的に受け取った請求書や領収書等をデータのまま保存しなければなりません。逆にいうと、そのデータを出力した書面等の形で保存することは認められないということです

めんどくさ。

これ、積極的に電子帳簿保存法を活用しようとか、そういう話じゃなくて、多くの企業が巻き込まれる事故みたいなものですからね。

個人的には全く興味が湧きませんが、どうしても仕事でやらないといけないので、続きを書きます。

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3. 電子取引とは

まず、そもそも「電子取引とは?」というところから。

電子帳簿保存法における「電子取引」とは、「取引情報」の授受を電磁的方式により行う取引をいいます(あんまり説明になってないけど)。

また、ここでいう「取引情報」とは、取引に関して受領し、または交付する情報で、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などに通常記載される事項をいいます。

なので、そういう取引情報を「紙」ではなく、「データ」で授受するのが「電子取引」ということです。

4. 電子取引の例

消費税のほうの記事にも少し書きましたが、電子取引については、例えば、以下のような取引が該当します。

  • いわゆるEDI取引
  • インターネット等による取引
  • 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)
  • インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引
  • これで一応電子取引のイメージは大丈夫だと思いますが、電子取引の範囲に興味がある方は、以下の記事をどうぞ。

     

    5. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存

    次に、「電子取引を行ったら、何をすればいいのか?」というお話です。

    これについては、上記のとおり、データのまま保存する必要があります(令和3年度税制改正後)。

    逆にいうと、そのデータを出力した書面等の保存は不可です。

    しかも、データの保存(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等)にあたっては、ただ保存するだけではダメで、一定の要件を満たす必要があります。

    シンプルにいうと、真実性や可視性を確保するための要件ということになるのですが、もう少しいうと、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件としては、以下の4つがあります。

    (1) 真実性の確保改竄防止措置。以下のいずれか)
    ①タイムスタンプが付与されたデータを受領する
    ②速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付与する
    ③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利用する
    ④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付けする
    (2) システム概要書等の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合)(詳細はこちら
    (3) 見読可能装置の備付け等(詳細はこちら
    (4) 検索機能の確保

    めんどくさ。

    それぞれの要件については、また個別に書きますが、システム対応できてないと、(1)と(4)がしんどそうです。

    こだわりがなければ、(1)の改竄防止措置は、④訂正削除の防止に関する事務処理規程を作るのが楽だとは思います(国税庁がひな型も示してくれているので。詳細はこちら)。

    なお、改竄防止措置については、以下の記事にもう少し詳しく書いています。

     

    (4)は、ある程度の規模の企業なら、「取引等の年月日」・「取引金額」・「取引先」で検索可能な状態でデータを保存しておく必要があります。なので、「請求書をPDFでもらったから、とりあえず、共通フォルダに格納しとくかー」みたいに簡単な処理では済まず、日常業務でちょっと煩わしいことが起きそうです。

    なお、検索機能の確保については、以下の記事にもう少し詳しく書いています。

     

    6. 必要最小限の対応(2021年9月追記)

    ここまでをまとめると、「電子取引のデータ保存はめんどくさい」ということになりますが、システム対応もせず、必要最小限の対応で済ませる場合のイメージについては、以下の記事をご参照ください。

     

    7. 個人的な感想(2021年9月追記)

    お仕事でこの件の対応をしていて感じるのは、システム対応できているか否かでだいぶ負担が違うということです。

    ただ、システム対応できていても、これって経理部門だけが対応すればいいお話じゃなくて、全社的な運用に関わる部分も大きいですよね。経理部門は「こうやって保存してください」って言わないといけないですし。

    しかも、業務フローが変わると、内部統制のほうにも影響するし。

    「在宅勤務を推進するために、スキャナ保存とセットで対応する」みたいな積極的な取組みの一環であれば、前向きに捉えることもできますが、そうでなければ、「めんどくさい」の一言に尽きると思います。

    8. 宥恕規定(2022年7月追記)

    2022年(令和4年)1月1日から2023年(令和5年)12月31日までの2年間に行う電子取引については、所轄税務署長が要件を満たす形でデータ保存できなかったことに「やむを得ない事情」があると認め、かつ、納税者が出力書面を保存している場合には、それでOKみたいな感じになっています(宥恕規定。詳細はこちら)。

    実質的には2年間の適用延期と考えてもいいんじゃないかと思います。

    今日はここまでです。

    では、では。

    電子帳簿保存法に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。第2版の紹介記事はこちら)。

    第3版 電子帳簿保存法の制度と実務(Amazon)

     

    ■電子帳簿保存法の電子取引に関する記事の一覧はこちら

     

    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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