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電子帳簿保存法

電子帳簿保存法(電子取引):検索機能の確保

今日も電子帳簿保存法における電子取引の制度のお話です。

今回は、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】をもとに、電子取引の取引データを保存する際に必要になる検索機能の確保について書きます。

0. この記事のポイント

電子取引のデータ保存に係る要件の1つに検索機能の確保があります。売上高が1,000万円以下の事業者を除いては、データの保存にあたって、最低限、「取引年月日等」・「取引金額」・「取引先」をキーにしてデータを検索できるようにしておく必要があります。

 

 

1. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存

2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、データのまま保存する必要があります(そのデータを出力した書面等の保存は不可)。

しかも、データの保存(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等)にあたっては、以下の4つの要件を満たす必要があります。

(1) 改竄防止措置
(2) システムの概要書等の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合)
(3) 見読可能装置の備付け等
(4) 検索機能の確保

このあたりは以下の記事にまとめました。

 

2. 検索機能の確保

2-1. 具体的な要件

このうち、(4) 検索機能の確保については、具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

① 「取引年月日等」・「取引金額」・「取引先」を検索の条件として設定することができること
② 日付または金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
③ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること

2-2. 取引金額とは(2021年11月追記)

国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)では、検索要件の記録項目である「取引金額」を税抜と税込のどちらとすべきかについて、帳簿の処理方法(税込経理/税抜経理)に合わせるべきとしています。

これは、税務調査では、帳簿に関連する書類や取引情報の確認を行っていくことが想定されるので、帳簿と同じ金額で検索できるようにしておくべきという趣旨で、これは一応納得できます。

ただ、「受領した国税関係書類に記載されている取引金額を検索要件の記録項目とする」のもOKだそうです(電子取引で国税関係書類を受領するケースがどういうケースなのかよくわかりませんが)。

また、取引金額が定められていない契約書や見積書等については、検索要件における「取引金額」は空欄または0円と記載すればよいとのことです(ただし、空欄とする場合、空欄を対象として検索できるようにしておく必要あり)。

2-3. 税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じる場合

上記の要件に関して、電磁的記録について、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②及び③の要件は不要となります。

「ダウンロードの求めに応じる」ということなので、税務職員がシステムを直接操作するイメージではなく、税務職員がダウンロードすべき内容を指定するイメージだと思います。

つまり、原則としては、調査を受けている側が指定されたデータをダウンロードして、税務職員に提供する形ということです。

【2021年11月追記】
国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)では、提出の際のデータの形式や並び順について、特に決まりはないものとされています。ただし、保存要件を充足するためには、通常出力できるであろうファイル形式等で提供される必要があるとのことです。

2-4. 売上高が1,000万円以下の事業者

上記2-3の場合で、判定期間に係る基準期間における売上高が1,000万円以下の事業者については、全ての検索機能の確保の要件が不要となります(詳細はこちら)。

このあたりは、以下の記事にもうちょっと具体的に書きました。

 

2-5. システム対応できているか

取引情報の保存については、サーバ等に保存する場合のほか、クラウドサービス等を利用する場合もあると思いますが、どういった保存方法によるにせよ、上記の条件を満たす形で検索できるようにしておく必要があります。

システムが対応していれば、何ら問題はない話だとは思いますが、そうじゃなければ、確認しておいたほうがよさそうです(システム対応しない場合の対応についてはこちら)。

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3. 二以上の任意の記録項目の組み合わせ

ここからはおまけで、国税庁のQ&A(一問一答)の内容です。

上記③の「二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること」は、普通に読めば、「AかつB」だと思います。

3-1. 「A又はB」の組合せは必要か

ただ、国税庁のQ&A(一問一答)には、「A又はB」も含まれるかを問うQも入ってます。

これに対しては、「A又はB」の組合せは必要ないというAになっています。

理由としては、「A又はB」の組合せについては、それぞれの記録項目により二度検索するのと実質的に変わらない(当該組合せを求める意味がない)から、だそうです。

そりゃそうですよね。重複はあるかもしれないですけど。国税庁の人も大変だなと思います。

3-2. 絞り込み検索の可否

もう1つ、国税庁のQ&A(一問一答)では、「一の記録項目により検索をし、それにより探し出された記録事項を対象として、別の記録項目により絞り込みの検索をする方式」もOKと書いてあります。

つまり、一の記録項目(例えば「A」)により検索をし、それにより探し出された記録事項を対象として、別の記録項目(例えば「B」)により再度検索をする方式でもいい、ということです。

結果は同じになるから、だそうです(笑) そりゃそうですよね。

逆にいうと、必ずしも「AかつB」という組合せでダイレクトに検索できなくてもいいってことです。

国税庁の人はお疲れ様でした。

今日はここまでです。

では、では。

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■電子帳簿保存法の電子取引に関する記事の一覧はこちら

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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