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佐和周のブログ

雑感

オススメの書籍紹介:『勘定科目統一の実務』

このブログでは、不定期でオススメの本をご紹介しています。

いま自分で本を書いているので、少しの間、その本に参考文献として書く予定の本を挙げていきたいと思います。

今回は『勘定科目統一の実務』です

今回は、『勘定科目統一の実務』(KPMG/あずさ監査法人アカウンティングアドバイザリーサービス著)という本です。

 

Amazonのリンクを貼ったときに見たのですが、レビューだと厳しいコメントが入ってるんですね。いい本だと思うけどなー。

海外子会社であったら読んだほうがいいかも

私はよく海外子会社管理のサポートをしているのですが、管理連結などで海外子会社から情報を吸い上げるとき、「海外子会社が現地でどういう勘定科目を使っているか」というのは非常に重要なポイントです。

海外子会社では、自社の(現地決算用の)勘定科目とは別に、親会社報告用の勘定科目を持っている場合が多く、その組替に時間を要したり、日本側から問い合わせたときに必要なデータが出なかったり、そういう問題が起こりがちです。

グローバルで会計システムが統一されていれば悩むことは何もないですが、そんなケースは稀なんじゃないでしょうか。個人的には、海外子会社が勘定科目の対応表(自社用 vs. 親会社報告用)を作っているケースをよく見かけますが(いわゆる勘定科目のマッピングです)、この本は、そういうケースも扱ってくれています。

別に海外子会社に限定した内容ではないのですが、この本では「海外子会社に関する悩みごと」に触れてあることが多いです。で、それに大局的な視点で道筋をつけてくれる感じです。

私もこの本には相当助けてもらいました。

海外子会社の決算早期化のために、勘定入力方法の改善なんかをやっていると、分野的に参照する基準のようなものがありません。「自分ではこれがベストだと思うけど、これでアドバイスしていいのかな?」ということは正直考えます。

そういう場面で、この本を参照して、「やっぱりこれでいいんだ」と思うこともあれば、「こっちのほうがいいな」と思うこともありました。

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この本のすごいところ=頭の整理に役立つ

この本に書いてあることは抽象的な部分もありますが、実務をやっていると、それが思考の整理の助けになる面があります。

例えば、「勘定科目の統一は、手段であって目的ではない」というのは当然のことです。なので、何のために勘定科目を統一するのか、ということを先に明確にしておいたほうがいいです。

私の場合は、海外子会社からの月次報告を見やすくしたり、月次の管理連結をスムーズにしたりなど、どちらかというと管理会計のほうをメインに対応しています。一方で、以下にあるように、「財務報告の信頼性向上」が目的なら、また対応は異なってくるはずです。

…例えば、グループ業績管理高度化を目的とした統一であれば、親会社における業績管理ルール・業務プロセス・体制や…グループ業績管理に関わるシステム構成の方針などを明確にしておくことが必要となる。
 同様に、財務報告の信頼性向上や会計情報の精度向上が目的であれば、会計方針の統一の取組方針を検討しておくことが必要となり、子会社の財務経理業務の標準化であれば、業務標準化の取組方針やグループ会計システムの導入方針などを明確にしておくことが重要である。
 勘定科目を統一すること自体が目的ではないため、科目統一だけが単独の取組みとなるケースはむしろ稀である。…

こういうのをちゃんと書いてくれてるのは、本当に有難いです。実務をやってると、色々なところからニーズが上がってきたり、逆に反発があったりして、どうしても頭の中がぐちゃぐちゃになってきます。そういうのがキレイに整理されるというか。

ケーススタディは参考になる部分が多い

もちろん、もっと具体的なことも書いてあります。

第6章が「勘定科目統一のケーススタディ」になっていて、事例が4つ挙げられています。

うち3つが製造業で、その中の「事例3」は、海外子会社とのやり取りも具体的に記述があります。「売掛金と未収入金の違い」とか、ほんと頷きながら読んでしまいますし、「機能別P/Lか性質別P/Lか」みたいなくだりは、そんなことまで聞かれるんだなとビックリしました。

ケーススタディはちょっとレベル高めの印象ですが、管理レベルにかかわらず、参考になる部分は多いと思います。

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ずっと怒られてる気になる

ただ、この本を読んでると、何か怒られてる気分になることがあります。

よく日本企業と欧米企業が比較してあって、「いかに欧米企業がすごいか」→「いかに(大多数の)日本企業があるべき水準で管理できていないか」というノリで書いてあったり。

…本社への月次業績報告は、制度連結勘定科目と同じかそれよりも粗い(集約された)勘定科目で行われるケースも少なくない。月次では売上と営業利益だけを親会社へ報告させるケースもあるのではないだろうか。これらは、会社単体の業績管理が主体となっていて、グループ経営管理が未成熟な状態にあることを示している。

そうか… 管理連結用ならそれで十分だと思ってたけど、私がお仕事させて頂いているところはだいたい未成熟なのか… さすがに売上と営業利益だけというのは経験ないけど…

でも、たまにはこうやって怒られるのも悪くないですよね。大人になると、叱ってもらえる機会が減ってくるので。

私クラスになると、今でも家ではいくらでも叱ってもらえるので、成長の機会も無限大ですけど。

海外子会社管理あるある

最後に、個人的にめっちゃ遭遇するケースについて。

…従来から子会社の経営管理を各社の自治に任せており、子会社に対するガバナンスが緩やかな企業グループでは、親会社主導で統一した勘定科目体系に対して子会社が納得感を示さないこともよくみられる。

「ガバナンスが緩やかな」とか、さすが大人のワード・チョイスですね(笑)

でも、「貴社は子会社に対するガバナンスが緩やかなので…」とか言うと、ケンカ売ったことになるような気がします。

まあ、現地スタッフの業務フローを変更すると、ほぼ反発がありますよね。「納得感を示さない」以上のリアクションが普通だと思います。

なので、上で書いた目的に遡って、現地スタッフに丁寧に説明するのは、大事なことですよね。やっていると、心が折れそうなときも多いですけど。

全体として

この本は、「読めばすぐに使える情報が満載」とか、そういう類いの本ではないです。

ただ、この分野で悩んだことがあれば、間違いなく問題の整理に役立ちます

また、これから悩むであろうことが先回りして書いてあることもあります。

その意味で、すごくいい本だと思います。

今日はここまでです。

では、では。

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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