国税庁が電子帳簿保存法Q&A(一問一答)を改訂(2022年6月)…電子取引編
久々に電子帳簿保存法のお話です。
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0. 前提
前提として、現時点での電子取引の取扱いは以下の記事をご参照ください。
1. 国税庁:「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)」の改訂
国税庁は2022年6月24日付で電子帳簿保存法取扱通達を改正し、2022年6月30日に電子帳簿保存法Q&A(一問一答)を改訂しました(リンクは以下です)。
電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~
今回は、Q&A(一問一答)の改訂内容のうち、電子取引の制度に関係する部分を概観したいと思います。
2. 電子取引の制度に関係する改訂内容
(1) 2021年11月公表の「お問合せの多いご質問」の反映
電子取引の制度に関係する改訂は結構あるのですが、2021年11月に公表された「お問合せの多いご質問」で回答済みの内容(改めて一問一答に反映しただけのもの)も含まれています。
具体的には、以下の7つのQがこれに該当します。
問35 EDI取引を行った場合について、取引データそのものを保存する必要があるでしょうか。それとも、EDI取引項目を他の保存システムに転送し、エクセル形式やPDFデータ等により保存することも可能でしょうか。
問45 自社のメールシステムでは受領した取引情報に係る電子データについて検索機能を備えることができません。そ場合、メールの内容をPDF等にエクスポート・変換し、検索機能等を備えた上で保存する方法も認められますか。
問47 検索要件の記録項目である「取引金額」については、税抜・税込どちらとすべきでしょうか。
問48 単価契約のように、取引金額が定められていない契約書や見積書等に係るデータについては、検索要件における「取引金額」をどのように設定すべきでしょうか。
問49 「ダウンロードの求め(電磁的記録の提示・提出の要求)」に応じることができるようにしておく場合の当該電磁的記録の提出について、提出する際のデータの形式や並び順については決まりがあるのでしょうか。また、記憶媒体自体についても提示・提出する必要はあるのでしょうか。
問58 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面をスキャナ保存することは認められますか。
これらのQについては、以下の記事で(適当に)要約しながら解説しているので、興味のある方はご覧ください。
電子帳簿保存法(電子取引):国税庁が「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」を公表
いま気付いたのですが、「お問合せの多いご質問」って、微妙に変な日本語ですね。
(2) 純粋に追加されたQ
一方、純粋に追加されたと思われるQは以下のとおりです。
問9 インターネットバンキングを利用した振込等は、電子取引に該当するのでしょうか。また、該当する場合には、どのようなデータを保存すべきでしょうか。
問17 パソコンやプリンタを保有しておらず、スマートフォンのみで取引を行っている場合には、どのように電子取引データ保存への対応をすればいいでしょうか。
問36 EDI取引において、相手方から受け取ったデータに記載されている又は含まれている各種コードについて、あらかじめ定めている変換テーブルを使用することによって、その内容を変更することなく自社のコードに変換して保存することは認められるでしょうか。
例えば、EDI取引において、「税込」という情報を、相手方ではコード「1」とし他データで送付してきたものを、自社においてはコード「2」と変換した上で取り込んで保存することは認められますか。
問37 エクセルやワードのファイル形式で受領したデータをPDFファイルに変換して保存することや、パスワードが付与されているデータについて、パスワードを解除してから保存することは、認められますか。
問38 電子メール等で受領した領収書データ等を、訂正・削除の記録が残るシステムで保存している場合には、改ざん防止のための措置を講じていることとなりますか。
問39 サイトからダウンロードできる領収書等データは、ダウンロードした時に授受があったとされるのでしょうか。また、ダウンロードしなければ、その電子データの保存義務は生じないのでしょうか。
問40 自社が発行した請求書データの保存について、当該データに記載されている内容が事後的にわかるものであれば、データベースにおける保存でもよいでしょうか。
問46 複数の請求書等が含まれているようなPDF形式の電子データは、どのように保存すれば検索要件を満たすこととなりますか。
問59 私は、勤務先から支払われている給与のほか、副業として行っている講演・原稿執筆から得ている雑所得を有しています。これらの雑所得を生ずる活動については、相手方等との一切のやりとりを電子メール・ウェブサイト上で行っていますが、法第7条の規定に基づき、その取引情報に係る電子データを保存しなければなりませんか。
私が個人的に衝撃を受けたのが、問17の「パソコンやプリンタを保有しておらず、スマートフォンのみで取引を行っている場合」というケースです。
少し前に税務通信か何かで解説されていたような気もしますが、そんなこともあるんだなあと。
3. 追加されたQはブログで書いていく予定です
最近は、電子取引に対応済みの企業はもう粛々と作業をされていて、宥恕規定を使っている企業は電子帳簿保存法のことを忘却されている(ように思われる)ので、私の記憶からも電子帳簿保存法は消えつつあります(全く興味もないので)。
そのため、ちょっと思い出す意味も込めて、このブログでも上記の改訂内容を少しずつ書いていきたいと思います。
【2022年7月追記】
書きました(以下です)。
電子帳簿保存法:インターネット・バンキングによる振込等は電子取引に該当するか
電子帳簿保存法:e-Taxによるダイレクト納付等の電子納税は電子取引に該当するか
電子帳簿保存法:スマートフォンしかない場合の電子取引の制度対応
電子帳簿保存法(電子取引):EDI取引に係る留意事項
電子帳簿保存法(電子取引):データ保存の際のPDF変換やパスワード解除の可否
電子帳簿保存法:メールで受領したデータを訂正・削除の記録が残るシステムに保存できるか
電子帳簿保存法(電子取引):領収書等データをダウンロードしないという選択肢の有無
電子帳簿保存法(電子取引):自社が発行した請求書データのデータベースにおける保存
電子帳簿保存法(電子取引):複数の請求書等が含まれるPDFファイルの分割の可否
電子帳簿保存法(電子取引):副業から得る雑所得に関する電子データの保存
今日はここまでです。
では、では。
↓電子帳簿保存法に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。第2版の紹介記事はこちら)。
第3版 電子帳簿保存法の制度と実務(Amazon)
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。