電子帳簿保存法(電子取引):領収書等データをダウンロードしないという選択肢の有無
引き続き、電子帳簿保存法における電子取引の制度のお話です。
2022年6月に改訂された「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)」の関係で、今回は領収書等データをダウンロードしないという選択肢の有無について書きます(一問一答の改訂自体についてはこちら)。
Table of Contents
1. 「ダウンロードしなければ電子データの保存義務は生じないのか」という謎のQ
今回の改訂で追加されたQのうち、一番意味が分からないものが以下です。
サイトからダウンロードできる領収書等データは、ダウンロードした時に授受があったとされるのでしょうか。また、ダウンロードしなければ、その電子データの保存義務は生じないのでしょうか。
これは「どの時点で電子取引を行ったことになるのか」というタイミングのことを聞きたいのでしょうか?
あえて領収書等をダウンロードしないのはなぜ???
2. よくわからないA
そういう疑問を持ちつつ、これに対するA(の主要部分)を見ると…
インターネット上でその領収書等データを確認できることとなった時点が電子取引の授受があったタイミングだと考えられます。領収書等データが提供されている以上、ダウンロードしなければ保存義務が生じないというものではありません。
噛み合ってる?
3. よくわからない解説から理解できること
解説を見ると、もう少しは理解できるのですが、1つは「電子取引の取引情報を保存すべきタイミング」を聞きたかったようです。
この点に関しては、「領収書等データがインターネット上で確認できる状態」になれば、その時点で電子取引が行われており、そのタイミングで保存すべきとされています。
「郵送された書面が自身の郵便受けに投函された状態」と同視できるからだそうです。昭和の比喩で味わい深いですね。
ただし、(インターネット上で確認できる状態となったことが)メール等で通知されない場合には、適宜のタイミングで保存を行えばよいとのことです。F5連打しなくていいってことでしょうか。
4. なぜダウンロードしないのか不明
上記のQのうち、「ダウンロードしなければ、その電子データの保存義務は生じないのでしょうか」については、やはり意味が分かりません。
Aには、「別途同一の記載内容の書面が郵送されてくる場合には、正本(どちらか一方)のみの保存で足ります」とあるので、そういうケースをイメージしているのかもしれません。
Q&A(一問一答)、ミステリーの要素を取り入れ始めたのでしょうか?
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。