第4回 ケース:複数の国外関連取引を一の取引(単位)として取り扱わない場合
引き続き「取引単位の検討」シリーズです。
前回は、「取引単位」の問題についてお伝えしました。棚卸資産を販売すると同時に役務提供を行うなど、複数の国外関連取引を行っているケースで、移転価格税制の適用上、「個別の国外関連取引ごとに独立企業間価格を算定するのか」または「複数の国外関連取引を一の取引として一体で独立企業間価格を算定するのか」という論点です。
Table of Contents
1. ポイント集のケース(複数の国外関連取引を一の取引として取り扱わない場合)
この取引単位の問題に関して、ポイント集(国税庁 「移転価格税制の適用におけるポイント」)では、以下のポイントが挙げられています。
国外関連者と複数の棚卸資産取引を行っている場合、それらを一の国外関連取引として一体検証を行うことが合理的か、検討する必要があります。
この点について、ポイント集では以下のケースが示されているので、見ていきましょう。
一言でいうと、一の国外関連取引として一体検証を行うことが合理的ではなさそうなケースです。
2. テーマ
国外関連者から複数の棚卸資産を購入する場合の取引単位
3. ケースの前提条件
まず、ケースの設定(前提条件)は以下のとおりです。
(1) 登場人物
外国兄弟会社:X国に所在する(日本企業の)外国兄弟会社。テレビ及び時計の製造販売を行っている
(2) 国外関連取引の内容
日本企業(下図の「納税者」)は、外国兄弟会社からテレビ及び時計を輸入し、これらを日本国内の第三者に販売している
(出典:国税庁 「移転価格税制の適用におけるポイント」)
4. 移転価格調査でのやり取り(ポイント集での空想)
ポイント集では、以下のような空想上のやり取りがあります。
企業担当者:管理会計上テレビと時計を分けて損益管理しているわけではないため、両製品を一の取引として独立企業間価格を算定するのが適切であると考えています。
5. 移転価格調査の内容
(1) 調査担当者がやったこと
①契約書や伝票などを収集した
そうすると…
テレビと時計については、両製品の営業担当部署が異なっていることが判明した
②営業担当者へヒアリングし、営業報告書や顧客との価格交渉メールなどの提出を受けた
そうすると…
両製品の価格設定においても、顧客と個別に交渉を行っている事実が確認された
(2) 調査担当者が考えたこと
調査担当者は、「テレビと時計は、原則どおり個々に独立企業間価格を算定することが合理的であるのではないか」と考えました
6. このケースからの教訓
このケースからの教訓は、以下のとおりです。
- 取引単位の検討においては、複数の国外関連取引を一の国外関連取引として検証する場合、事業部等や損益管理が同じというだけでなく、製品の販売戦略、価格設定や価格交渉の経緯などについての検討が必要となります。
- この点については、「複数の棚卸取引の価格交渉、価格設定及び販売戦略等がどのように行われているかを示す資料」が検討され、関係部署へのヒアリングも行われるので、心の準備をしておきましょう。
このケースをシンプルにまとめると、テレビと時計については、営業担当部署は違うし、価格設定も顧客と個別に交渉を行っているので、原則どおりの取扱い(個別の取引ごとに独立企業間価格の算定を行うべき)ということですね。
じゃあ、今日はこのあたりで。次回も今回に引き続き、この取引単位の問題をケースの形で見てみます。
では、では。