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インボイス制度:適格請求書記載の登録番号が有効かどうかの確認

前回に引き続き、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)についてです。

インボイス制度が導入されると、仕入側において、相手方がインボイス発⾏事業者(適格請求書発⾏事業者)かどうかの確認という面倒な作業が必要になると言われているので、今日はそのあたりについて書きたいと思います。

0. この記事のポイント

インボイス制度の下では、仕入に際し交付を受けた請求書等の作成者が適格請求書発行事業者に該当するかを確認する必要があります(該当しなければ仕入税額控除不可)。この点については、国税庁のウェブサイトにおいて、登録番号をもとに検索してチェックする必要があり、これはかなり面倒な作業になりそうです。

 

 

1. 国税庁のウェブサイトで要検索

まず、インボイス制度の下では、仕入に際して請求書を受け取った場合、交付を受けた請求書等の作成者が適格請求書発行事業者に該当するかを確認する必要があります。

これは相手方が適格請求書発行事業者に該当しなければ、仕入税額控除が認められないためです。

この点については、国税庁のウェブサイトにおいて、登録番号をもとに検索し、適格請求書発行事業者の情報(公表事項)を閲覧することになるようです。

2. めちゃくちゃ面倒なのでは?

Q&A(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A)では、検索を行った結果、公表事項を閲覧できない場合、請求書等に記載された登録番号が誤っている可能性などがあるため、相手方にその理由を確認する必要があるとされています。

それはそうなんですが、これって、結構きつそうですよね。

いったい取引先(仕入先)が何社あると思っているのか…

中には必ず「登録忘れてましたー」という仕入先もあるはず。

事前に仕入先に登録の有無を確認しておかないと、インボイス制度開始後に地獄を見ることが予想されます。

3. 必要になりそうな対応

インボイス制度導入後は、取引開始時点で、「相⼿⽅(仕入先)が適格請求書発行事業者であるかどうか」を確認することは標準的な手続きになりそうです。

まずは、取引開始時(取引前)の確認として、仕入先が登録番号を持っているかどうかをチェックする必要があります。インボイス制度の開始前には、これを一斉に実施するのかもしれません。

ただ、取引開始時にチェックしたとしても、それで済むわけではないですよね。適格請求書発行事業者の登録は必ずしも永続するものではないので。

そうすると、取引開始後も、手元にあるインボイスについて、新たに登録番号を確認するという作業が必要になりそうです。

もちろん、適格請求書発行事業者の登録が取り消された場合や効力を失った場合は、その年月日が国税庁のウェブサイトで公表されるようですが、能動的に見に行かないとそれも把握できないですし。

取引開始前の確認でできるだけ網を広げておいて、取引開始後は確認を最小限にとどめる形などが考えられますが、仕入先が多数の小規模な企業で、免税事業者なんかも混ざってたりすると、この確認は考えるだけでもしんどそうです。

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4. 財務省主税局の人のコメント(2022年8月追記)

税務通信(3713~3715号)の財務省主税局の人が参加する座談会の記事では、登録番号の確認方法について、結構議論されています。

企業の方は、記事自体をご覧頂いたほうがいいと思います(たぶんイラっとくると思いますが)。個人的には、いくつか気になるコメントがあったので、あまり重要じゃないものもありますが、以下で簡単に触れておきます。

まず、「そういう問題じゃないんだけどな」という内容です。

…取引の件数が膨大になるような大きな企業になってくると、反社会的勢力との取引の忌避とかバックグラウンドチェックなどもある程度行われている中で、果たしてそんな罰則のリスクを冒して、虚偽の請求を行ってくる人とどこまで取引をされているか、ということも考慮していただく必要があると思っています。

何か感覚がズレてる気が…

もう1つは、「一度取引があった人について、頻繁に登録番号の確認をする必要があるかというと、そうでもない」というコメントについて。私が十分に理解できていない可能性もありますが、以下のような理由のようです。

  • 登録の取りやめについては、原則として「明日からインボイス発行事業者やめます」といったことはできず、個人事業者であれば、年単位で判断することになっている(こちら
  • 現行の事業者免税点制度のように、課税と免税のステータスを「自動的に」行ったり来たりすることはなく(こちら)、事業者の「能動的な」取りやめ(登録取消届出書の提出)がない限りは、登録の効力が失われない
  • 「へぇー」という感想しかありません。

    あとは、「支払先の年間の売上高が1,000万円を超える事業者である場合、ほぼ登録の確認は必要ない」とか、「「継続的にこの取引先に年間1,000万円以上を支払っている」という関係の場合も登録番号の確認はほとんど必要ない」とか、そういうコメントもあります。

    まあ、そうなのかもしれませんが、企業側の運用で何とかさせようというスタンスがイマイチな気がします。インボイス制度自体は別に変な制度じゃないんだから、「こういう制度が導入されます。コストをかけて対応してください」という正直なスタンスのほうが好感を持ちますが、そういうわけにもいかないんでしょうね。

    最後に、以下のコメントは、企業の人が怒りそう。

    …少し統計学的な発想になりますが、確認の重要度に応じて、そういったリスクに関しても重みづけをして、支払先が膨大にいるのであれば、データ処理とかシステムの中で管理していくことが現実的ですし、重要なのかなと考えられます。

    これは完全に「神経逆なで系」ですね。座談会という和やかな場ですが、こういうことを言わされる立場の人はかわいそうだなと思います(ご本人が嬉々として語っておられるのであればよいのですが)。

    今日はここまでです。

    では、では。

    ■インボイス制度に関する記事の一覧はこちら

     

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    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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