第4回 営業損益から経常損益までの数字を追いかけてみる
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今日は、損益計算書の営業損益から経常損益までの見方をお伝えします。要は営業外損益ということですが、営業外収益の中では受取配当金、営業外費用の中では支払利息が特に重要です。支払利息に関しては、利払い能力を示す財務比率(インタレスト・カバレッジ・レシオ)にも触れたいと思います。
「そこそこわかりやすい財務諸表」シリーズの損益計算書編、第4回です。
目次
今回は営業外損益です
前回は、売上高から営業損益までを確認したので、今回はその下の経常損益までを確認します。
前回まで見ていた損益計算書で、営業損益から経常損益までを抜き出すと、こんな感じです。

間に挟まっているのは、「営業外損益」ですけど、金額はそんなに大きくないですね。
営業外損益を見てみる
ちなみに、営業外損益というのは、文字どおり営業活動「以外」の損益で、主に金融収益や金融費用です。
どんな項目が入ってるか、前回まで見ていた損益計算書で具体的に見てみましょう。

営業外収益とは
営業外収益は、主に金融収益なので、受取利息や受取配当金が入ってます。
受取利息については、発生元の資産を貸借対照表で探せばいいと思います。預金とか貸付金とかそういうものですね。
受取配当金は、どこに投資しているかを見たほうがいいです。受取配当金は、確かに金融収益ではあるのですが、特に持分比率の高い投資先からの配当金については、実質的には「事業投資の利益が配当金の形で入ってきている」と見ることもできるので。
あとは、海外との取引が大きければ、為替差益もここに入ってきます。逆に為替差損なら営業外費用ですね。
営業外費用とは
支払利息が特に重要
次に営業外費用ですが、ここで圧倒的に重要なのは支払利息です。
この企業は支払利息が無視できるレベルに小さいので、全然重要じゃないですけど。
一般に、その企業にとって「金利負担がどの程度重いのか」は絶対に見ておいたほうがいいです。
フローでみるときの単純な見方は、営業利益と支払利息のバランスですね。金利は基本的に営業利益を原資として払っていくので。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
もうちょっと財務分析的なことをいうと、インタレスト・カバレッジ・レシオという財務比率があります。企業の安全性(債務返済能力)を見るための指標です。
この「インタレスト・カバレッジ・レシオ」は、以下の算式で計算されます(倍率で表します)。

え? 事業利益って? と思われるかもしれませんが、上式のとおり、事業利益は基本的に「営業利益+受取利息・配当金」で計算されます。
つまり、インタレスト・カバレッジ・レシオは、分母が「支払利息」で、分子が利払いの原資となる「事業利益」なので、「支払利息の何倍の原資を持っているか」を示す指標です。
支払利息をカバーするのに十分な事業利益が獲得できていれば、インタレスト・カバレッジ・レシオは高くなるということです。
実際の損益計算書からわかること
ちなみに、上記の営業外損益の内訳を見てわかるのは、「この企業、たぶん資金が余ってるな」ってことです。
支払利息が相対的に小さいので、借入れの水準は低そうですし、それ以上に受取利息が大きいので、どこかで余剰資金を運用してるんじゃないかと推測されます。
これがだいたい営業外損益の見方です。
今日はここまでで、次回は特別損益を確認します。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。