第12回 国外関連取引の内容等の検討:記事まとめ
今回は「国外関連取引の内容等の検討」シリーズの記事をまとめてお伝えします。
Table of Contents
1. 前処理としての国外関連取引の内容等の検討の重要性
シリーズ1回目は、国外関連取引の内容等の検討の位置付けを確認しました。
比較可能性分析は確かに重要ですが、比較対象取引の選定を適切に行うためには、前段階として、国外関連取引の内容等を十分に理解しておかなければならないんでしたよね。つまり、「どういったポイントについて比較するか」という比較を行うための「諸要素」について的確に把握しておく必要があるということです。
2. 比較を行うための「諸要素」
比較を行うための「諸要素」としては、具体的には、以下が当てはまります。
②売手または買手の果たす機能
(+負担するリスク+使用する無形資産のうち重要な価値のあるもの)
③契約条件
④市場の状況
⑤売手または買手の事業戦略(市場への参入時期等も考慮する)
このうち、①棚卸資産の種類、役務の内容等と③契約条件については、「国外関連者と国外関連取引」シリーズで確認済みです。
そのため、このシリーズでは、②・④・⑤の内容を見ました。
(1) 比較を行うための諸要素:機能及びリスク
上記のうち、まず確認したのは、②売手または買手の果たす機能(+負担するリスク+使用する無形資産のうち重要な価値のあるもの)です。
シリーズ3回目から6回目までの以下の記事ですね。
第3回で確認したのは、移転価格税制の世界では、「高い機能を果たす法人は、高い付加価値を生み出し、高い利益を得る」ことが期待される、つまり、「高い機能を持っていると、利益水準は高くてしかるべき」というのが基本的な発想になるという点です。
そのため、機能・リスク分析の結果は、独立企業間価格の算定方法の選択や比較対象取引の選定など、移転価格税制の適用における様々な論点に影響するということであり、非常に重要なものと位置付けられます。
機能やリスクの具体例、また移転価格文書(ローカルファイル)にそれをどのように書くかについては、シリーズ4回目から6回目の記事に詳しく書いてあります。
(2) 比較を行うための諸要素:市場の状況
次に見たのは、上記の比較を行うための「諸要素」のうち④市場の状況です。
シリーズ8回目と9回目の以下の記事ですね。
市場の状況の例としては、取引段階がありました。
同じ商品であっても、卸売り段階と小売り段階で価格の付き方は違うので、国外関連取引を比較対象取引(の候補)と比較しようとしたときには、その価格差を調整しなければならない。そういう差異の調整をするために、取引段階を把握しておく必要がある、等々のお話でしたね。
(3) 比較を行うための諸要素:事業戦略
そして最後の要素が、⑤売手または買手の事業戦略でした。
シリーズ10回目と11回目の以下の記事ですね。
第11回 ローカルファイルの記載例:事業内容、事業方針及び組織の系統
これについてはノーコメントです。
3. 移転価格税制の英語
それと、このシリーズでも、少し英語のお話をしました。
まとめると、以下のような感じです。
comparability analysisです。
functional analysisです。
どっちも、まんまという感じでした。
でも、機能分析のところで見た以下の関連表現については、セットで覚えておくと、それなりに使いやすいと思います。
4. 最後に
このシリーズの位置付けをまとめると、以下のような感じです。
→ その比較対象取引の選定を適切に行うためには、前段階として、国外関連取引の内容の理解が必要です。
→ その際には、「どういったポイントについて比較するか」という、比較を行うための「諸要素」の把握が必要です。
繰り返しになるのですが、実際には、比較対象取引を選定する以前の問題として、そもそも国外関連取引の内容自体が十分に把握されていないことがあります。
そのため、シリーズ6回目で見たような、機能とリスクの整理表がすんなり作成できそうかは、常に考えて頂いたほうがいいと思います。
なお、これは初めてローカルファイルを作成するときだけのお話ではありません。グループ内の商流や機能・リスクの分担関係は絶えず変化しているので、それをモニターしておくという意味合いもあります。
ということで、「国外関連取引の内容等の検討」シリーズはこれで終了です。お疲れ様でした!
少し別のテーマを挟んで、その後、次のフェーズである「比較対象取引の選定」シリーズを見ていきたいと思います。
では、では。