インボイス制度:提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存形式と保存方法
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
2022年11月に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂され(詳細はこちら)、そこで新たに追加された項目について。
今回のテーマは、提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存形式と保存方法です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存
適格請求書発行事業者が適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合において、電子帳簿保存法に準じた方法により電磁的記録を保存することで、消費税法における適格請求書の写しの保存要件を満たすこととなります(以下の記事参照)。
2. 電磁的記録の保存形式
これに関連して、Q&Aでは、電磁的記録の保存形式に言及があります。
これはどちらかと言うと電子帳簿保存法に関するお話ですが、この場合に保存する電磁的記録は、必ずしも、相手方に提供した電磁的記録そのものに限られず、取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集された電磁的記録により保存することも可能です(以下の記事にまとめてあります)。
Q&Aでは、以下のようなケースが取り扱われています。
Q&Aにおける結論としては、この場合、そのPDF形式がXML形式の電磁的記録から取引内容が変更されるおそれがなく合理的な方法により編集されたものであれば、PDF形式の基となったXML形式の電磁的記録を保存することでも差し支えないこととされています。
例えば、データベースからフォーマットに出力してPDF形式の請求書を作成するようなイメージです。
3. 電磁的記録の保存方法
もう1つ、Q&Aでは、電磁的記録の保存方法にも言及があります。
これもどちらかと言うと電子帳簿保存法に関するお話ですが、電磁的記録がXML形式等の取引情報に関する文字の羅列であっても、それが請求書等のフォーマットなどにより視覚的に確認・出力されるものについては、保存要件を満たします。
Q&Aでは、このような場合に、電子帳簿保存電帳法における保存要件の一つである「整然とした形式及び明瞭な状態」での画面及び書面への出力について、「どの程度の表示が求められるか」というQがあり、具体例として、「適格請求書の記載事項を示す文言(例えば、「取引年月日」という文言)も必要か」という点も確認しています。
これに対するAとしては、以下の出力(印刷)イメージのように、適格請求書であることが視覚的に確認でき、内容が記載事項のどの項目を示しているか認識できるものであれば、OKとされています。
つまり、消費税法上は、適格請求書の記載事項を示す文言(「取引年月日」や「課税資産の譲渡等の税抜金額又は税込金額を税率ごとに区分して合計した金額」という文言など)が絶対に必要というわけではないということです。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。