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インボイス制度:仕入税額の帳簿積上げ計算の「課税仕入れの都度」とは

今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。

頼まれて調べたものの、「よくわからないのですが…」と回答したもので、仕入税額の帳簿積上げ計算がテーマです。

0. この記事のポイント

仕入税額の帳簿積上げ計算においては、課税仕入れの都度、帳簿に仮払消費税等を計上しますが、これは基本的には適格請求書(課税期間の範囲内でまとめて交付を受けたものを含む)を単位として帳簿記載することを意味します。ただし、実際にはより弾力的な運用も認められるようで、このあたりはよくわかりません。

 

 

1. 仕入税額の「帳簿積上げ計算」

いきなりですが、仕入税額の計算方法には、「割戻し計算」と「積上げ計算」があります(積上げ計算が原則)。また、積上げ計算には、「請求書等積上げ計算」と「帳簿積上げ計算」があります。

 

今回は、この仕入税額の「帳簿積上げ計算」のお話です。

ベースになるのは、税務通信(3713~3715号)の財務省主税局の人が参加する座談会の記事です。ただ、何だかよくわからない話なので、皆さんは記事自体をご覧頂ければと思います。

2. 前提条件

お話の前提は、企業が納品書ごとに消費税額を計算する一方、月まとめの請求書を発行している状況です。

この状況で、以下の2つのケースを想定します。

(1) 納品書がそれ単体でインボイスに該当するケース(月まとめの請求書は単なる支払額の集計)
(2) 納品書ではなく、月まとめの請求書がインボイスに該当するケース

それぞれのケースで、仕入税額の帳簿積上げ計算がどうなるか、というお話です。

順番に見ていきます。

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(1)「インボイス=個々の納品書」のパターン

(1)のようなケースで、毎回の納品書ごとではなく、月まとめの請求書を基礎として1本の仕訳を入力している状況を想定します。

この場合、仮払消費税等は、インボイス(=納品書)ではなく、それをまとめただけの月次請求書を基礎として計上することになりますが、このような経理処理が認められるのかどうかというテーマです。

➀月まとめの請求書でまとめて仮払消費税を計上するのも可

結論としては、毎回の納品書がインボイスに該当する場合であっても、月まとめの請求書を基礎として仮払消費税等を計上するというオペレーションは認められるとのことです。

具体的には、月まとめ請求書の交付を受け、その請求金額の総額に10/110(または8/108)を乗じて仮払消費税等を計上する形でOKだそうです。

何で?

➁なぜそんな処理が認められるのか

この点、消費税法施行令(第46条第2項)は、以下のような規定になってます。

事業者が、その課税期間に係る前項各号に掲げる課税仕入れについて、その課税仕入れの都度、課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の十…を乗じて算出した金額…を…帳簿に記載している場合には、…当該金額を合計した金額に百分の七十八を乗じて算出した金額を、…課税仕入れに係る消費税額とすることができる。

そして、これを受けた通達(抜粋)は以下のとおりです。

…「その課税仕⼊れの都度、…帳簿に記載している場合」には、例えば、課税仕⼊れに係る適格請求書の交付を受けた際に、当該適格請求書を単位として帳簿に記載している場合のほか、課税期間の範囲内で⼀定の期間内に⾏った課税仕⼊れにつきまとめて交付を受けた適格請求書を単位として帳簿に記載している場合がこれに含まれる。

記事によると、「課税仕入れという事実行為があり、その後にインボイス受領という行為があるので、インボイスの都度でないと駄目なのではないかと思う方が結構いる」とのこと。これは私もそうなので、よくわかります。

でも、たぶんそうじゃないんですよね。主税局の人の論理の流れは、途中までは分かります(私の理解では、以下のとおり)。

  • 通達では、一定期間まとめたインボイスでよいと言っている→わかる
  • つまり、事実行為よりも少し後ろ倒しのタイミングでもよいということ→わかる
  • 通達はあくまで例示でしかない→わかる
  • インボイスを基に記帳するタイミングを1つの方法として示しているだけ→え?
  • 「インボイスを基礎(単位)として帳簿に記載する」というのはあくまでも例示ということでしょうか?

    だから、インボイスではなく、月まとめの請求書のタイミングで課税仕入れを認識するのであれば、その課税仕入れに係る仮払消費税等で帳簿積上げ計算を行うことが認められるということ?

    すみません、結論以外、よくわかりません。あ、やっぱり結論も正しく理解できた自信がありません。

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    (2)「インボイス=月まとめの請求書」のパターン

    もう1つは、(2)の(毎回の納品書ではなく)月まとめの請求書のほうがインボイスに該当するケースで、にもかかわらず、毎回の納品書の内容を入力し、その際に仮払消費税等も計上している状況を想定します。

    つまり、(1)の真逆で、1つのインボイスを(時系列で)いくつかに分解して仮払消費税等を計上する形です。

    結論としては、この計上の仕方も認められるそうです。

    しかも、単なる分解とは異なり、仮払消費税等について、月まとめの請求書上の記載金額とズレ(端数による差額)が生じても構わないそうです。言い換えると、このように計上した仮払消費税等の合計額が、(インボイスである)月まとめの請求書に記載された消費税等の額の合計額を超えても構わないってことなんだと思います。

    何でもアリということですね。

    ロジックとしては、四捨五入の切上げ・切捨てがランダムであればほとんど差が生じず、過度な有利不利も生じないから、ということのようですが、いったいインボイスとは…

    なお、この例は時系列での分解ですが、部門ごとの分解も可ということです。例えば、仕入れに係る請求書(1枚)がインボイスに該当するケースで、それについて調達部門ごとに仕訳を行うようなケースです。つまり、仕訳のほうはバラバラということですが、これも問題ないそうです。

    よかったですね。

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    3. 国税庁のQ&Aの改訂(2022年11月追加)

    2022年11月のQ&Aの改訂により、仕入税額の計算方法について、以下の注書きが追加されています。

    帳簿積上げ計算において計上する仮払消費税額等については、受領した適格請求書ではない納品書又は請求書を単位として計上することや継続的に買手の支払基準といった合理的な基準による単位により計上することでも差し支えありません。

    ここから上記の内容を読み取る感じになるんでしょうか。国家公務員(国1)の試験、そりゃあ難しいはずだ。

    4. 結局のところ

    結局のところ、帳簿積上げ計算の場合の仮払消費税等の計上は、インボイスとは切り離してしまってもよいということなんでしょうか?

    私には依然としてよくわかりません。

    今日はここまでです。

    では、では。

    ■インボイス制度に関する記事の一覧はこちら

     

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    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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