第11回 ローカルファイルの記載事項:法人が用いた予測の内容等(DCF法)
引き続き「無形資産の譲渡取引とDCF法」シリーズです。
前回は、ローカルファイルにおいて、「DCF法を用いた場合の計算」をどう書くか、という内容をお伝えしました。
今回はもうちょっと細かいのですが、それを補完する内容として、DCF法に関連して「法人が用いた予測の内容等」をローカルファイルにどう書くか、というお話をしたいと思います。
Table of Contents
1. ローカルファイルに含まれる書類
まず、ローカルファイルには、「法人が独立企業間価格を算定するに当たり用いた予測の内容、当該予測の方法その他当該予測に関する事項を記載した書類」が含まれます。
DCF法の場合、予測利益等の形で、一定の予測情報を使う必要があるので、その内容を説明する必要があるということです。
2. ローカルファイルの記載事項(必要な情報)
この点に関して、例示集(国税庁 「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成に当たっての例示集」)では、必要な情報の例として、以下が挙げられています。
(2) 予測の方法
(3) その他の事項
これだけではさっぱりなので、もうちょっと具体的に見ていきます。
(1) 予測の内容及び根拠
上記(1)予測の内容及び根拠については、例示集にいくつか注意点が挙げられています。
まず、予測に用いた事業計画等の信頼性に関する記載が必要です。もうちょっと言うと、事業計画等の信頼性を担保するために、外部の評価機関に評価を依頼している場合には、その評価機関による評価の内容についても記載する必要があります。
また、予測の基礎となった過去の収益実績等がある場合には、その収益実績等の内容及び当該収益実績等を基礎とした理由についても、記載が必要です。
常識的な範囲で、「なぜそのように予測したのか」という根拠を示す必要があるということですね。
(2) 予測の方法
上記(2)予測の方法については、以下の情報を含める必要があります。
…経営判断・投資判断・移転価格の算定など
●予測を報告する対象
…株主総会・取締役会等
(3) その他の事項
上記(3)その他の事項(その他当該予測に関する事項)については、予測の内容を補足する資料として、専門家や調査機関が作成した業界や企業に関する資料などが想定されています。
3. 例示集の改訂(2020年6月)により追加
ちなみに、以下の記事で触れましたが、これらの記載事項は2020年6月の例示集の改訂によって追加されたものです。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。