インボイス制度:ごみ袋やごみ処理券に係る適格請求書の交付方法
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
2023年10月に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されたので(詳細はこちら)、そこで新たに追加された項目について。
今回は、ごみ袋等に係る適格請求書の交付方法です。すでに「お問合せの多いご質問」で回答済みだったものですけど。
Table of Contents
1. 前提となる情報
とりあえず、前提となる情報は以下のとおりです。
- 小売業(スーパーマーケット)を営む事業者
- 商品として扱う自治体の指定ごみ袋や粗大ごみの処理券等については、条例等の内容に応じて、課税や非課税、不課税など課税関係が異なる
この課税関係を前提に、Qとしては、「顧客に対してどのように適格請求書を交付すればよいか」という感じです。
率直なところ、「ゴミ袋とか粗大ゴミの処理券って、そういう課税関係だったんだ」というほうにちょっとだけ興味が湧きました。こういうのも社会勉強だなあと思います。
2. 課税関係の整理
これについて、Q&Aでは、まず、小売店等が商品として扱う各自治体の指定ごみ袋や粗大ごみの処理券等(「ごみ袋等」)の販売について、各自治体が定める条例等の内容に応じて、以下のように課税関係を整理しています。
- 各自治体から仕入れたごみ袋等自体の譲渡として課税取引となる場合
- 物品切手の譲渡として非課税取引となる場合
- 受託販売(一時的な代金の預り)として課税対象外(不課税取引)となる場合
なるほど、なるほど。
3. 課税関係に応じた対応
なので、上記のような課税関係に応じて、適格請求書等を交付する等の対応を検討することになります。
といっても、課税取引であれば、あまり考えることもないので、問題は非課税取引や不課税取引の場合です。
この点、Q&Aでは、ある程度現実的な対応を挙げてくれています。
4. 媒介者交付特例
対応としては、媒介者交付特例を使えばよいというお話のようです(媒介者交付特例についてはこちら)。
というのも、ごみ袋等の販売により収受する金銭は、各自治体におけるごみ処理という役務の提供(課税資産の譲渡等)の対価(ごみ処理手数料)を各自治体に代わって収受するという側面を有するものだからです。
具体的には、その販売が非課税取引や不課税取引となるものであっても、媒介者交付特例を使って、顧客に対して、小売店等の名称や登録番号を記載した適格請求書等の交付を行うこととしても差し支えないそうです(当然ながら、これによって課税資産の譲渡等として取り扱う必要性は生じません)。
また、媒介者交付特例に係る適格請求書等の写しの交付については、小売店等から各自治体に対して交付している納入通知書等に代えることも認められるということで。
もちろん、媒介者交付特例を活用せず、ごみ袋等の本来的な課税関係に基づき、非課税取引や不課税取引として領収書等の交付を行ってもOKです。
5. 税抜価額と税込価額の混在
もう1つ、税抜価額と税込価額の混在の問題もあります。
すなわち、ごみ袋等については、一般的に条例等に基づいてその税込販売価額が定められているものだそうで(知らんけど)、小売店等においては、税込価額で記載するごみ袋等と、税抜価額で記載するその他の商品を併せて一の適格簡易請求書に記載する場合があるみたいです。
このとき、「税込販売価額」を税抜化せず、「税込販売価額」を合計した金額及び「税率の異なるごとの税抜価額」を合計した金額を表示し、それぞれを基礎として消費税額等を算出し、算出したそれぞれの金額について端数処理をして記載することとしても差し支えないとのことで。
小売業も色々と大変だあと思います。
6. 小売店等からごみ袋等を購入した事業者における課税上の取扱い
Q&Aには、おまけで、小売店等からごみ袋等を購入した事業者における課税上の取扱いも示されています。
小売店等からごみ袋等を購入した事業者が、その購入したごみ袋等のうち、自ら引換給付(ごみ処理という役務の提供)を受けるものにつき、継続してそのごみ袋等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとする場合には、各自治体の条例等の内容にかかわらず、小売店等から交付を受けた媒介者交付特例に係る適格請求書等及び一定の事項を記載した帳簿の保存により、仕入税額控除の適用を受けることが可能だそうです。
世の中には自分の知らないことがいっぱいあるんだなあと痛感しました。
だからといって、ゴミ袋について、これ以上深く知りたいとも思わないんですけど。
今日はここまでです。
では、では。
↓インボイス制度に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。制度開始後の6訂版です。「決定版」らしいです。3訂版の紹介記事はこちら)。
6訂版 Q&Aでよくわかる消費税インボイス対応要点ナビ【決定版】(Amazon)
↓インボイス制度をカバーした『海外取引の経理実務 ケース50』の3訂版です(私の本です。紹介記事はこちら)。
これだけは押さえておこう 海外取引の経理実務 ケース50〈第3版〉(Amazon)
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。