宥恕規定の改正で電子取引に係る紙保存の廃止は実質2年延期?(2021.12時点)
【2022年7月追記】
この記事は古い記事です。以下の記事で、確定情報(2021年12月の施行規則改正)について書き直しているので、そちらをご参照ください。
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週末なので、雑談です。
でも、今は仕事ばかりなので、電子帳簿保存法の電子取引のことを書きます。
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0. この記事のポイント
【12月10・17日追記】
この記事の内容は、与党税制改正大綱に反映されました。詳細は以下の記事をご覧頂ければと思いますが、大綱では、電子取引のデータ保存に係る宥恕措置への言及があり、実質的には2年間の猶予が与えられそうです。ただ、あくまでも宥恕措置なので、所轄税務署長が「やむを得ない事情」があると認める場合にはセーフという建付けになり(「やむを得ない事情」についてはこちら)、もう少し詳細な情報待ちの状況です。なお、宥恕措置の適用に事前申請は不要みたいです。
以下は与党税制改正大綱の公表前の情報です。
1. 2022年1月1日以後は電子取引の紙保存はNG
2022年1月1日以後に行う電子取引については、取引データをデータのまま保存する必要があり、紙保存は不可になります(詳細はこちら)。少なくとも、今のところは。
もう期限まで1か月を切っていますが、周りを見回すと、「あれ? 2023年からだっけ?」と思うことがあります。とてもそんな状況ではないってことで。
それに合わせて、「まあ、そこまで厳しいこと言わなくても大丈夫なんじゃない?」みたいな雰囲気も醸成されてきました(笑)
国税庁も、先月あたりから急に優しくなったり(以下の記事をご参照ください)。
2. 今週は新しい情報が
そんななか、今週(11/29の週)は色々なところから、紙保存が一定期間(?)OKになる措置の話が出てきました。
税務通信だと「一定の措置を検討」となっていて、具体的には、「一定の宥恕を認めるといった措置」が想定されているようです。
他に、2年間は「出力書面による保存を可能とする旨の宥恕規定を明文で設ける」みたいに書いてる媒体もあります。
やっぱり施行規則の宥恕規定をいじるんでしょうか?
【2021.12.6追記】
日経にも「義務化2年猶予」って出てますね。
3. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する宥恕規定
宥恕規定については、以下の記事で触れてます。
具体的には、施行規則(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則)の第4条第3項に規定があります(以下に抜粋します)。
法第七条に規定する保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により、同条に規定する財務省令で定めるところに従って当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。ただし、当該事情が生じなかったとした場合において、当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない。
普通は「やむを得ない事情」にはなかなか該当しませんが、これを使って(あるいは改正して?)、一定期間は紙保存をセーフにするとか、しないとか。
4. 個人的な感想
これ、12月中に改正するんですかね? 確かにちょうど自民党の税制調査会が税制改正の審議を行っている時期ですけど。
まあ、軌道修正するのはいいことですし、好きにやってもらったらいいのですが、このスケジュール(1月1日からの適用)が厳しすぎるというのは、だいぶ前から言われていたはずです。
私は仕事上「おまけ」で対応していただけで、何ら実害はないのですが、個人的には、早めに対応を進めた企業が馬鹿を見るのだけは、ちょっとどうかなと思います。
あと、企業の準備が進まなかったのは、制度自体がイマイチなんじゃないかという気もするので(検索機能の確保とか)、ついでに見直したほうがいいような気もします。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。