電子帳簿保存法:重要書類のスキャナ保存の要件
少し間が空きましたが、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度のお話です。
今回のテーマは、重要書類のスキャナ保存の要件です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 重要書類とは
前提として、スキャナ保存の制度の対象書類については、以下の記事でまとめました。
また、重要書類の範囲は、以下の記事でまとめています。
重要書類は、スキャナ保存制度の対象書類(決算関係書類以外の国税関係書類)のうち、資金や物の流れに直結・連動する書類なので、領収書や請求書がこれに該当します。
2. 重要書類のスキャナ保存の要件
この重要書類のスキャナ保存にあたっては、以下の要件を充足する必要があります。
(2) 一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り+カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)
(3) タイムスタンプの付与など
(4) 解像度及び階調情報の保存+(一定の場合)大きさ情報の保存
(5) バージョン管理(訂正または削除の事実及び内容の確認等)
(6) 入力者等情報の確認
(7) スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
(8) 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け+整然・明瞭出力
(9) 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
(10) 検索機能の確保
はい、読む気がしない。
以下、それぞれの要件について、少しだけ付け足します(重要なものは別途書きます)。
(1) 入力期間の制限+(3) タイムスタンプの付与など
(1)については、書類の受領等後、または業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力する必要があるのですが、重要な内容なので、次回以降でまとめてご説明します。
(3)も結構重要なお話です(タイムスタンプ自体については、電子取引のほうでちょっと書いたので、以下の記事をご参照ください)。
ちなみに、タイムスタンプを付与しなくていい(別の改竄防止措置で代替できる)ケースもあるので、これも別の機会に詳しく書きます。
(4) 解像度及び階調情報の保存など
(4)については、➀受領者等が読み取る場合で、➁国税関係書類の大きさがA4以下のときには、大きさに関する情報の保存が不要となります。
大きさに関する情報については、スキャナや複合機で読み取る場合には問題にならないと思います(たぶん)。ただし、スキャナ保存制度にいう「スキャナ」には、スマートフォンやデジタルカメラも含まれるので(詳細はこちら)、そういうので写真を撮った場合、大きさ(用紙サイズ)までは記録できないんじゃないかと思います(たぶん)。
大きさに関する情報の保存が不要になるのは、➀受領者等が読み取る場合だけなので、受領者が経理部門以外で、経理部門がその受領者に代わってスキャンする場合には、大きさに関する情報の保存が必要になります。
なので、重要書類について言うなら、スマートフォンやデジタルカメラを使えるのは、➀受領者等が読み取る場合で、➁国税関係書類の大きさがA4以下のときだけなので、従業員の立替経費の精算などでスキャナ保存制度を使うときには、注意が必要ですね。
ちなみに、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【スキャナ保存関係】にはもうちょっと細かく書いてあって、日本産業規格(JIS)A列の規格に該当しない書類についても、A列4番に収まる大きさの書類についてはA4以下の大きさと扱われます。日本産業規格において、A列4番は短辺が210㎜、長辺が297㎜とされ、±2㎜が許容されているそうなので(初耳)、具体的には、短辺が212㎜、長辺が299㎜の枠内に収まる大きさのものがA列4番以下の大きさの国税関係書類となります。
へぇー。
(5) バージョン管理
(5)については、重要なので別途書きますが、どうしても言いたいことがあります。
国税庁のQ&A(一問一答)では、バージョンを「ヴァージョン」と書いてあります。ちょっとカッコつけてないですか? わざわざvの発音にこだわらなくていいので、そんなことよりも、調査のときに英語の文書を出すと、何でもかんでも「和訳出してください」というところからやめませんか?
(6) 入力者等情報の確認
(6)については、入力を行う者またはその者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにしておく必要があります。
これは、具体的には、これらの者を特定できるような事業者名・役職名・所属部署名・氏名などの身分を明らかにするものの電子的記録(または書面)により、確認できるようにしておくことをいいます。
ちなみに、入力を行う者を直接監督する者とは、「スキャナ作業を直接指揮監督するという形で当該作業に係わっている者」をいうそうです。なんかすごい世界ですね。個人的には一刻も早く離れたいです。
(8) 見読可能装置の備付け+整然・明瞭出力
(8)については、電磁的記録を見るためにはディスプレイ等に出力する必要がある、という単純なお話です。
ただ、それらの装置の性能や設置台数等については、特に要件はありません。
なお、国税庁のQ&A(一問一答)では、税務調査の際の留意点に言及されています。
すなわち、税務調査では帳簿書類を確認する場面が多いことから、税務調査にディスプレイ等を優先的に使用することができるようにしておく必要があるようです。
そうしておかないと、調査官と2人で肩を並べてモニターを見ることに。。。
(9) 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
(9)については、要はスキャナ保存に関係するシステムのマニュアルです。
これについては、取扱通達で、システム関係書類等を書面「以外」の方法により備え付けることもOKとされています。
具体的には、国税庁のQ&A(一問一答)に書いてあって、オンライン・マニュアルやヘルプ機能に操作説明書と同等の内容が組み込まれている場合には、操作説明書が備え付けられているものとして取り扱って差し支えないこととされています。
ただし、それが整然とした形式及び明瞭な状態で画面及び書面に、速やかに出力できることが前提です。
(10) 検索機能の確保
(10)の検索機能については、電子取引の場合と同じような感じなのですが、長くなりそうなので、別にまとめたいと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。