電子帳簿保存法:電子取引の種類ごとの具体的なデータ保存方法
今日も電子帳簿保存法における電子取引の制度のお話です。
今回は、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】をもとに、電子取引の取引データの具体的な保存方法について書きます。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 取引情報の保存方法
2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、データとして保存する必要があります。
具体的にどのような保存方法が認められるかについては、国税庁のQ&A(一問一答)で、以下の電子取引の種類に応じて例示があります。
(2) 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
(3) 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合
(4) 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合
以下、それぞれの電子取引の種類ごとの具体的な保存方法を見ていきます。
(1) 電子メールに請求書等が添付された場合
電子メールに請求書等が添付された場合については、以下の保存方法があります。
② 添付された請求書等をサーバ等に保存する
このあたりは、以下の記事もご参照ください。
【2021年11月追記】
国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)では、受領した取引情報に係る電子データを検索できないようなメールシステムの場合、メールの内容をPDF等に変換して、検索機能等を備えた上で保存する方法も認められるとしています。本当にそんなことをやるかどうかは別にして。
(2) 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合については、それがPDF等の形式でダウンロードできるパターンと、HTMLで表示されるパターンに言及されています。
① ウェブサイトに領収書等を保存する
② ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する
(2-2) HTMLデータで表示される場合
① ウェブサイト上に領収書を保存する
② ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する
③ ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF等)し、サーバ等に保存する
PDFでなくてもOKで、かつ、HTMLならスクリーンショットでもセーフってことですね。
従業員による経費立替(詳細はこちら)なんかを考えると、それなりに有益な情報だと思います(以下の(4)も併せてご覧ください)。
(3) 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合
第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合については、以下の保存方法があります。
② クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する
(4) 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合
従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合は、従業員のスマートフォン等に表示される領収書データを電子メールにより送信させて、自社システムに保存する方法が示されています(スクリーンショットによる領収書の画像データでもOK)。
(5) EDI取引データ(2021年11月追記)
国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)では、EDI 取引を行った場合の取引データの保存に言及されています。端的には、取引データそのものを保存する必要があるか、それともEDI 取引項目を他の保存システムに転送しPDF データ等により保存することも可能か、というテーマです。
これについては、データそのものに限らず、そのEDI データについて、「取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集されたデータ」により保存することも可能とされています。例示されているのは、EDI の取引データをXML データでやり取りしている場合に、そのXML データを一覧表としてエクセル形式に変換して保存するような形です。
逆にNGなのは、授受したデータを手動により転記して別形式のデータを作成するような形です(取引内容の変更可能性があるから、ということらしいです)。
もうこういう線引きは、国税庁に聞かないとわからないですね。
2. 取引情報の入力は不可
電子取引で授受したデータ(電磁的記録)については、上記の方法により、「そのまま」保存する必要があります。
逆にいうと、電子取引により受領した請求書等の取引情報(請求書等に記載される日付・取引先・金額等の情報)を確認し、それを自ら「入力」することをもって、電磁的記録の保存とすることは認められません。
まあ、そんなことはしないでしょうけど。
3. 保存場所とサーバの場所
上記のデータを保存するサーバ等は自社の国内のサーバである必要はありません。
海外のサーバも、クラウドサービスの利用も可です。
これは取扱通達に書いてあります。
…保存場所に電磁的記録が保存等をされていない場合であっても、例えば、保存場所に備え付けられている電子計算機と国税関係帳簿書類の作成に使用する電子計算機とが通信回線で接続されているなどにより、保存場所において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、それぞれの要件に従った状態で、速やかに出力することができるときは、当該電磁的記録は保存場所に保存等がされているものとして取り扱う。
ちなみに、バックアップデータの保存については、法令上の要件とはなっていません。
ただ、国税庁のQ&A(一問一答)では、通信回線のトラブル等による出力障害を回避するという観点から、バックアップデータを保存することが望まれる、としています(詳細はこちら)。
電子帳簿保存法に関係なく、普通はデータのバックアップはとっておくはずなので、これは特に問題ないと思います。
今日はここまでです。
では、では。
↓電子帳簿保存法に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。第2版の紹介記事はこちら)。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。