レベル3のインプットの具体例(時価算定会計基準)
今日も、会計のことを書きます。
時価算定会計基準におけるレベル3のインプットについて。
Table of Contents
1. レベル3 のインプットの定義
レベル3 のインプットの定義は、以下のとおりです。
シンプルにいうと、市場データの裏付けがないインプットです。
なので、レベル3のインプットは、優先順位が最も低く、観察可能なインプットが入手できない場合に使われます。
2. レベル3のインプットに関する注意点
レベル3 のインプットを使う際には、「市場参加者が資産または負債の時価を算定する際に用いる仮定」を反映することとされています。
具体的には、ここでいう「仮定」には、「特定の評価技法に固有のリスク」や「インプットに固有のリスク」が含まれます。
例えば、資産の取引数量や取引頻度が著しく低下し、取引価格が時価を表していないと判断した場合(市場参加者が判断するであろう場合)などは、流動性リスクに関する調整を時価の算定に反映することが必要になる場合があります。
3. 適用指針におけるレベル3 のインプットの例示
もう少し書くと、適用指針では、レベル3 のインプットについて、以下のような例示があります。
長期の通貨スワップに関して、各通貨のイールド・カーブからスワップ・レートを算出しているが、所定の通貨のイールド・カーブが、当該通貨スワップのほぼ全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能な市場データによる裏付けがない場合
3年物の株式オプションに関して、過去の株価から算出されたヒストリカル・ボラティリティ
上記(2)については、「通常、ヒストリカル・ボラティリティは、オプションの価格に利用できる唯一の情報であるとしても、将来のボラティリティに対する市場参加者の現在の期待を表すものではない」ためとされています。前回のインプライド・ボラティリティとは違うということですね。
インプライド・ボラティリティのところでも書きましたが、ボラティリティは「変動率」のことで、ヒストリカル・ボラティリティは、過去のデータに基づいて統計的に算出する変動率のことです。IV・HVでいうと、HVのほうです。
金利スワップに関して、当該スワップについての第三者から提供された取引可能ではない価格に対する調整が、観察可能な市場データによる裏付けのないデータを用いて決定された場合
曖昧な面は残りますが、一応は「市場データによる裏付けがない」というところが決め手になってると思います。
4. レベル3のインプットの具体例
以下のような金融商品については、時価がレベル3に分類されやすいと思います(レベル2との区分は微妙ですけど)。
昨日書いたように、開示事例自体が少ないですが、割引現在価値法により算定した長期貸付金の時価をレベル2に分類しているケースがあるようです。なので、長期貸付金はレベル3とは限らないということで。
IFRSだと、非上場株式があるので、レベル3は結構ありますが、日本基準を前提にすると、一般事業会社ではレベル3のインプットはあまり使わない(自社で算定することはない)かもしれません。
なお、IFRSにおいて、非上場株式の公正価値測定にDCF法を使うとすれば、その場合の割引率は観察できないインプットに該当すると思います(EBITDA倍率みたいなマルチプルも同じ)。なので、非上場株式の時価はだいたいレベル3で、これとレベル2の長期貸付金との関係はちょっと気になります。
まあ、気になるのは仕事をしているときだけで、営業時間が終われば、時価算定会計基準のこと自体、完全に忘れてしまうんですけど。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。