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佐和周のブログ

移転価格税制

第12回 特定無形資産&特定無形資産国外関連取引とは

引き続き(?)「無形資産の譲渡取引とDCF法」シリーズです。

前回までで、DCF法の内容はだいたいお伝えしました。

今回から、特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置について見ていきたいと思います。

 

1. 特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置とは

この措置は、文字どおり、一定の無形資産について、事後的に価格調整を行うものです。

これは、以前に「無形資産の持ち方」のお話のときに話題にしたもので(こちら)、2019年度税制改正において、「評価が難しい無形資産を低税率国の子会社に安く移転して、所得を低税率国に付け替えようとする作戦」が封じられたというお話に関係します。

具体的には、特定無形資産国外関連取引に関して、取引後に対価算定の前提事項の内容と相違する事実が判明した場合に、「当初の特定無形資産国外関連取引の対価の額が適切に算定されていない」との推定のもと、再評価を行う仕組みといえます。うーん、全く頭に入ってこない。

2. 特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置について考える手順

ただ、「特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置」なので、以下の順番で見ていくのが良さそうです。

・特定無形資産とは
➡特定無形資産国外関連取引とは
➡特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置とは

今回は、まず「特定無形資産」がどういうものかを見ていきます。

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3. 特定無形資産とは

特定無形資産を最もシンプルにいうと、「評価困難な無形資産」です。

もうちょっというと、「国外関連取引を行った時において評価することが困難な無形資産」ですが、さらにいうと、以下の3つの要件の全てを満たす無形資産ということになります。

(1) 固有の特性を有し、かつ、高い付加価値を創出するために使用される
(2) 無形資産に係る予測利益の額を基礎としてその独立企業間価格を算定する
(3) 独立企業間価格を算定するための前提となる事項(予測利益の額など)の内容が著しく不確実な要素を有している

(1) 固有の特性+高い付加価値

(1)については、普段と用語が違うので、ちょっとイメージしづらいかもしれませんが、通達をベースに考えると、以下のような感じです。

  • 「固有の特性を有する」=「その独自性から比較対象取引を見いだすことが困難」
  • 「高い付加価値を創出する」=「重要な価値を有し所得の源泉となる」
  • (2) 予測利益の額を基礎とした独立企業間価格の算定

    (2)については、さっぱりいうと、DCF法で独立企業間価格を算定するものということです。

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    (3) 独立企業間価格算定の前提事項に著しく不確実な要素

    (3)については、財務省の税制改正の解説で、以下のような例示があり、イメージがつかみやすいと思います。

  • 類似する無形資産の把握が困難であることから価格算定の参考とする開発・使用実績がない場合
  • 無形資産の譲渡時においてその無形資産が開発途中であった場合
  • もうちょっというと、通達で、(3)に該当するかどうかは、以下を総合的に勘案して判定することとされています。

    • 無形資産国外関連取引に係る無形資産の使用等により生じることが予測される利益に係る
      • 予測の根拠及び目的
      • 予測される期間の長短
      • 予測の基礎となる過去の収益実績の有無
    • 無形資産国外関連取引に係る事業の将来性
    • 無形資産国外関連取引に係る価格調整または条件付支払の条項が定められた契約条件の有無等

    なので、まとめると、特定無形資産とは、「ユニークかつ高付加価値で、不確実な要素があって評価が難しいけど、DCF法で独立企業間価格を算定するもの」という感じです。

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    4. 注意すべき無形資産の特徴

    これでだいたいイメージはつかんで頂けると思うのですが(そうか?)、事務運営指針にも、「こういう特徴があったら、特定無形資産に該当するかどうかを十分に検討してね」という例示があるので、それも念のため見ておきます。

  • 支払対価の総額が確定されて譲渡されたもの
  • 研究開発段階にあるもの
  • 取引後一定の期間において商業的に使用される見込みがないもの
  • 新たな方法で使用されることが見込まれるもので、当該無形資産に類似するものの開発または使用の実績がないもの
  • 財務省の解説と重複している部分もありますが、特定無形資産というのはこういう感じの無形資産です。

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    5. 特定無形資産に該当するとどうなるか

    最後に位置付けの確認ですが、無形資産が「特定無形資産」に該当するということは、その国外関連取引が「特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置」の適用対象となる可能性があるということです。

    つまり、無形資産が「特定無形資産」に該当するのは、嬉しいことではないです(当たり前ですが)。

    6. 特定無形資産国外関連取引とは

    「特定無形資産」が確認できたので、次は「特定無形資産国外関連取引」です。

    これはシンプルです。「特定無形資産国外関連取引」とは、国外関連取引のうち、「特定無形資産」の譲渡もしくは貸付またはこれらに類似する取引をといいます。

    その価格調整措置なので、「特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置」ということです。

    あまりの文字列の長さと漢字の多さに疲れたので、今日はここまでです。次回はもう少し、特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の中身を見ていきたいと思います。

    では、では。

    ■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

     

    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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