電子帳簿保存法(スキャナ保存):検索機能の確保
今日も電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度のお話です。
引き続き、重要書類のスキャナ保存の要件の関係ということで、今回のテーマは、検索機能の確保です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 重要書類のスキャナ保存の要件
重要書類をスキャナ保存するための要件については、以下の記事にまとめました。
2. 検索機能の確保
そこでは、「検索機能の確保」とシンプルに書きましたが、スキャナ保存を行う場合には、以下の要件があります(電子取引の場合と同じような感じです。電子取引のほうの要件はこちら)。
②日付または金額に係る記録項目についてはその範囲を指定して条件を設定することができること
③二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
ただし、税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、上記②及び③の機能の確保は不要となるので、①が必須の要件ということになります。
3. 税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じる場合
上記の「ダウンロードの求めに応じる」というのは、税務職員がシステムを直接操作するイメージではなく、税務職員がダウンロードすべき内容を指定するイメージです。つまり、原則としては、調査を受けている側が指定されたデータをダウンロードして、税務職員に提供する形ということです。
ちなみに、国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)では、提出の際のデータの形式や並び順について、特に決まりはないものとされています。ただし、保存要件を充足するためには、通常出力できるであろうファイル形式等で提供される必要があるとのことです。
4. 検索項目のイメージ
「①取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先」を検索の条件として設定できる必要があるということですが、具体的な証憑書類ごとの内容については、取扱通達で以下のように例示されています。
⑵ 請求書…請求年月日、請求金額及び取引先名称
⑶ 納品書…納品年月日及び取引先名称
⑷ 注文書…注文年月日、注文金額及び取引先名称
⑸ 見積書…見積年月日、見積金額及び取引先名称
5. 取引金額とは
国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」では、上記①のうち「取引金額」について、補足情報があります。
すなわち、「取引金額」を税抜と税込のどちらとすべきかという点について、帳簿の処理方法(税込経理/税抜経理)に合わせるべきとしています。
これは、税務調査では、帳簿に関連する書類や取引情報の確認を行っていくことが想定されるので、帳簿と同じ金額で検索できるようにしておくべきという趣旨で、これは一応納得できます。
ただ、「受領した国税関係書類に記載されている取引金額を検索要件の記録項目とする」のもOKだそうです。
また、取引金額が定められていない契約書や見積書等については、検索要件における「取引金額」は空欄または0円と記載すればよいとのことです(ただし、空欄とする場合、空欄を対象として検索できるようにしておく必要あり)。上記の例だと、納品書がこれに該当するでしょうか。
6. スキャナで読み取った画像データのテキスト情報
最後にもう1つだけ。
国税庁のQ&A(一問一答)では、基本的にはスキャナで読み取った画像データをテキスト化して保存することを前提にしているように読めます。でも、例えば、経費精算などで、スキャンしたデータとセットにして、上記①の項目をシステムに入力する形でも大丈夫だと思います(たぶん)。
ちなみに、国税庁のQ&A(一問一答)では、スキャナで読み取った画像データをテキスト化して保存することができる機能などが備わっていない場合の取扱いにも触れられています。
この場合のソリューション()は手入力だそうです。具体的には、スキャナで読み取った国税関係書類に係る取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を手入力するなどして、検索の条件として設定することができるようにするということで。
普通のスキャナを買うのが早そうですね。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。