みなし外国税額控除を取り忘れた場合の更正の請求
今日も、少しだけ普段のお仕事に関係することを書きます。
昨日に引き続き外国税額控除関係のお話です。
具体的には、みなし外国税額控除を取り忘れた場合の更正の請求についてです。
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みなし外国税額控除
いきなりですが、外国税額控除には「みなし外国税額控除」という制度があります。
この点、月刊『国際税務』の連載「新任社員のための イチから分かる! 国際税務の仕組みとポイント」では、以下のように解説しました。
みなし外国税額控除制度とは、開発途上国等への投資を促進する目的で、実際には海外で支払っていない税金をあたかも海外で支払ったかのように日本の税金から控除するものです。つまり、日本企業にとってのみなし外国税額控除は、単純にいうと、その国へ進出する際の税務メリットとなります。
…例えば、海外で10%しか源泉徴収されていないのに、外国税額控除を適用するときには、あたかも20%の税率で源泉徴収されたかのように扱えるということです。
このみなし外国税額控除については、通常の外国税額控除とは異なり、純粋な税務メリットなので、基本的に「取らないと損」という性質のものです。
みなし外国税額控除の取り忘れ
要は、海外で納付した以上の外国税額控除が取れるという話なのですが、みなし外国税額控除制度は租税条約にその根拠を置くので、特定の国の特定の所得にしか適用されません。
なので、色んな機会に色んな企業の申告書を見ると、みなし外国税額控除を取り忘れているケースがそれなりにあります。
そして、多くの場合、金額的なインパクトもそれなりにあります。
実務でみなし外国税額控除を使うのは、中国からの使用料(ロイヤルティ)回収のケースが多いと思いますが、この場合、企業所得税部分は10%しか源泉徴収されていないにも関わらず、あたかも20%の税率で源泉徴収されたかのように外国税額控除を取れます。
そうすると、みなし外国税額控除を取り忘れた場合のインパクトは、中国からのロイヤルティの10%(=20%-10%)ということになり、これが丸々(所得ではなく)税額に効いてくるので、「金額的な影響、結構大きいやん」みたいな状況になることも多い印象です。
取り忘れたら更正の請求
まずは、みなし外国税額控除を取り忘れないようにしてください。
ただ、顧問税理士さんも含めて、制度を知らない場合やうっかりしていた場合は、みなし外国税額控除を取り忘れることもあるかもしれません。取り忘れに後で気付いたときの対処方法ですが、更正の請求ができるはずです。
ちなみに、当初申告要件の名残なのか、顧問税理士さんとか局の人とか、色んな人から「この場合は更正の請求はできないんじゃないか」とか言われるかもしれませんが(あくまでも私の経験です)、くじけずにやってください。
みなし外国税額控除の取り忘れで更正の請求を行う場合、そもそもの外国税額控除の計算がパーフェクトであれば、スムーズに進むと思います。でも、実際には控除限度額の計算などが間違っていることも多いので、そういうのを局の人とすり合わせるのに結構時間がかかります。なので、そういう覚悟の上でやってください。
未収還付法人税等の計上
更正の請求がうまくいけば、住民税も含めて、還付を受けられる場合が多いと思います(各都道府県や市町村とのやり取りがまた面倒)。
この場合、会計上は、どこかのタイミングで未収還付法人税等を計上するはずです。
ここでも「みなし外国税額控除の取り忘れは誤謬なんじゃないか問題」が発生するかもしれませんが、そういう不毛なのは適当に流してもらって、大事なこと(還付によるキャッシュ・フロー)に集中して頂ければと思います。
で、更正については、こちら側(企業側)でちゃんと資料が出せていても、局側の処理が遅れることもあります(特にいまはこんなご時世なので)。ただ、企業側は企業側で、決算との兼ね合いがあるので、未収還付法人税等の計上タイミングを考える必要があります。
なので、「何とか今月処理してください」みたいなお願いをすることもあるんじゃないでしょうか。
こういう場合、調査のときとは全然違って、局の人はすごく親切にしてくれる印象があります(人によると思いますが)。「局の人(おじさん)も同じサラリーマンで大変なんだな」ということを実感して、ちょっと見方が変わるかもしれません。
最後に
そんなこんなで、みなし外国税額控除を取り忘れた場合の更正の請求には様々なドラマがあります。
ただ、1つだけ言えることは、「更正の請求は結構めんどくさいので、そもそも当初の申告のときに、ちゃんとみなし外国税額控除を取っておいてください」ということです。それに尽きます。
今日はここまでです。
では、では。