第7回 取引単位の検討:記事まとめ
今回は「取引単位の検討」シリーズの記事をまとめてお伝えします。
Table of Contents
1. 問題の所在:複数の国外関連取引
このシリーズでは、対象となる国外関連取引が1本ではない場合について考えてきました。
例えば、国外関連者との間で「複数の棚卸資産を取引する場合」や、「棚卸資産取引と同時に無形資産を使用許諾したり、役務提供を行ったりする場合」などです。
そういった状況では、その複数の国外関連取引にどうやって独立企業間価格を算定するかというテーマがあり、端的には、「個別の国外関連取引ごとに独立企業間価格を算定するのか」または「複数の国外関連取引を一の取引として一体で独立企業間価格を算定するのか」ということです。
2. 密接に関連する他の取引
シリーズ第1回目で、まず確認したのは、「国外関連取引と密接に関連する他の取引」の例です。
連鎖取引のほか、同一の国外事業者との間で「複数の棚卸資産取引がある事例(コーヒーマシンとコーヒーパック)」や「棚卸資産取引と役務提供取引がある事例」などを見ましたよね。
また、シリーズ第2回目では、この「国外関連取引と密接に関連する他の取引」について、ローカルファイルに何を書くべきかを確認しました。
第2回 ローカルファイルの記載例:国外関連取引に密接に関連する他の取引
3. 「取引単位」の問題
シリーズ第3回では、問題になる国外関連取引が複数あるケースの「取引単位」の問題を議論しました。
端的には、独立企業間価格の算定は、個別の取引ごとに行うのが原則であるものの、複数の国外関連取引を一の取引として独立企業間価格を算定することが合理的と認められる場合には、それが認められます。
具体的にどういうケースで、一の取引として扱うのかについては、以下の例を挙げました。
(2) 生産用部品の販売取引とその部品の製造ノウハウの使用許諾取引等が一体として行われている場合
ポイントは、単にそういう価格設定や取扱いがされているというだけではダメで、「そういう価格設定や取扱いがされているので、独立企業間価格についても一体として算定することが合理的なんです」と言わなければならないということです。
4. 個別の取引ごとに独立企業間価格の算定を行う場合(原則的な取扱い)
シリーズ第4回と第5回はケースでしたが、第4回は、複数の国外関連取引を一の取引として取り扱わない場合、言い換えると、原則どおり、個別の取引ごとに独立企業間価格の算定を行うべきケースでした。
第4回 ケース:複数の国外関連取引を一の取引(単位)として取り扱わない場合
同一の国外関連者から、テレビと時計を輸入しているケースでしたが、それぞれ営業担当部署が異なっており、価格設定もセットではない(顧客と個別に交渉を行っている)ので、原則どおりの取扱いになりましたよね。
5. 複数の国外関連取引を一の取引として取り扱う場合
これに対して、シリーズ第5回は、複数の国外関連取引を一の取引として取り扱うべきケースでした。
第5回 ケース:複数の国外関連取引を一の取引(単位)として取り扱う場合
同一の国外関連者から、プリンターとインクを輸入しているケースでしたが、大半の顧客に対して一体で販売する戦略であり、両製品の価格を考慮して交渉を行っているので、一の取引単位として取り扱うということで。
第4回のケースと比べて頂くと、「取引単位」の問題のイメージが湧きやすいのではないかと思います。
6. 移転価格税制における「相殺取引」
シリーズ第6回は、取引単位の問題とはちょっと違うのですが、通達にいう「相殺取引」の内容を確認しました。
シンプルにいうと、同一の国外関連者との間で複数の取引が行われた場合で、一方の損失を他方の利益で埋め合わせるような形で価格設定している場合には、両取引を一つの取引として取り扱ってよいということでしたね。
税務調査の局面では、こういう主張が有効なケースがあることもお伝えしました。
7. 最後に
このシリーズで扱った「取引単位」の問題は、実際にはかなり重要なテーマだと思います。
端的には、「どの独立企業間価格の算定方法がベストか」を考える前に、「どの範囲の国外関連取引について、独立企業間価格の算定方法を検討すべきか」を考える必要があるということです。
そして、シリーズ第4回・第5回のケースからもわかるように、この「取引単位」の問題は、事実認定の要素も強いです。そのため、自社の考え方に沿う形で資料も準備しておくことも重要ですね。
なお、ここであまり触れなかった連鎖取引については、少し先のほうで、利益分割法との関係で見てみたいと思っています。
移転価格税制については、次のシリーズとして、「独立価格比準法」について解説する予定ですが、ちょっと移転価格税制の話題が続いたので、少し別の話題を挟んでからにしたいと思います。
では、では。