第6回 移転価格税制における「相殺取引」とは
引き続き「取引単位の検討」シリーズです。
ここまでお伝えしてきた取引単位の問題とはちょっと違うのですが、通達に「相殺取引」という項目があります。
Table of Contents
1. 相殺取引とは
移転価格税制における「相殺取引」がどういうものかというと、具体的には以下のような取扱いを指します。
- 一の取引に係る対価の額が独立企業間価格と異なる場合であっても、
- 「その対価の額と独立企業間価格との差額に相当する金額」を同一の相手方との他の取引の対価の額に含める(または対価の額から控除する)ことにより調整していることが、
- 取引関係資料の記載その他の状況からみて客観的に明らかな場合には、
- それらの取引は、それぞれ独立企業間価格で行われたものとすることができる
2. 原則的な取扱い
順番にご説明すると、まず、移転価格税制は、個々の取引の取引価格を問題とするものです。
この点にこだわると、1つの取引に係る対価の額が独立企業間価格と異なる価格となっている結果、日本側の課税所得が減少していれば、仮にその所得の減少を相殺する効果のある他の取引があったとしても、移転価格税制的にアウトになります。
つまり、移転価格税制は、他の取引と対価の額を通算して適用するものではないということですね。
3. 通達の意味合い
しかしながら、上記の通達では、同一の国外関連者との間で複数の取引が行われた場合で、両取引が相互に関連していることが明らかであり、かつ、その理由も合理的であると認められるときは、それらの取引を合わせて一の取引として取り扱っても可とされています。
つまり、同一の相手方との他の取引において、相殺的な価格を設定していることが客観的に明らかなときは、両取引を一つの取引として取り扱ってよいということですね。
4. 相殺取引の考え方が重要
実際にこの通達を使うかどうかは別にして、税務調査への対応に際しては、こういう「このお客さんに対しては、この取引では確かに損が出てますけど、別の取引で十分に取り返しており、トータルで考えてます」的な言い方が効果的な場合があります。
なので、この相殺取引の考え方も覚えておいて損はないと思います。
今日はここまでです。次回は、ここまでの「取引単位」シリーズの記事をまとめて、終わりにしたいと思います。