インボイス制度:JRの乗車券等と入場券等回収特例の関係
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、ここ数か月の議論のアップデートです。
今回のテーマは、JR乗車券と入場券等回収特例の関係です。
税務通信(3751号)に解説があるので、詳細についてはそちらをどうぞ。
Table of Contents
1. 帳簿のみ保存の特例(入場券等回収特例)
インボイス制度においては、適格請求書等の保存がなくても、帳簿のみの保存で仕入税額控除が適用できるパターンがいくつかあります(こちら)。
いわゆる「帳簿のみ保存」というものですが、具体的には、公共交通機関特例や出張旅費等特例などはよく登場するところです。
ただ、それ以外にも、入場券等回収特例というものもあります。
その対象は、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(公共交通機関特例の対象を除く)です。
2. JR乗車券等と入場券等回収特例の関係
税務通信の記事では、JR乗車券等について、この入場券等回収特例が使えるのかどうかが解説されています。
新幹線等の利用時には、乗車券や特急券は改札で回収されるので、入場券等回収特例を適用できるのではないか、という論点です(3万円未満なら公共交通機関特例が使えるはずなので、主に新幹線の話なんだと思います)。
結論としては、JR乗車券等について、入場券等回収特例は使えないようです。
3. 入場券等回収特例が使えない理由
上記のとおり、入場券等回収特例を適用できるのは、「適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等」です。
税務通信の記事によると、JR各社(北海道・東日本・東海・西日本・四国・九州)が運営する新幹線等では、乗車券や特急券に適格簡易請求書(簡易インボイス)の記載事項は記載されないそうです。まあ、確かに切符を見て、インボイスの登録番号が書いてあったら嫌ですけど。
そういえば、簡易インボイスは、自動券売機や有人窓口等で交付するんでしたね。一応、以下にまとめたのですが、忘れていました(興味なし)。
要は、新幹線等の利用の際、(改札で)乗車券や特急券は回収されるものの、そこに適格簡易請求書の記載事項が無いのでアウトってことですね。
ちなみに、出張旅費等特例が使えるなら、何も問題になりません。そのあたりも税務通信の記事では整理されているので、そちらをご覧ください。
色々勉強になるなあと思います。
今日はここまでです。
では、では。
↓インボイス制度に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。制度開始後の6訂版です。「決定版」らしいです。3訂版の紹介記事はこちら)。
6訂版 Q&Aでよくわかる消費税インボイス対応要点ナビ【決定版】(Amazon)
↓インボイス制度をカバーした『海外取引の経理実務 ケース50』の3訂版です(私の本です。紹介記事はこちら)。
これだけは押さえておこう 海外取引の経理実務 ケース50〈第3版〉(Amazon)
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。