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インボイス制度:免税事業者が請求書等に消費税額を記載することの可否

思い出したように消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。

今回は、お仕事で頂いたご質問で、免税事業者が請求書等に消費税額を記載することの可否について。

0. この記事のポイント

消費税の仕組み上、「免税」事業者が請求書等に「消費税額」を記載することは予定されていないものの、インボイス制度の導入後も、少なくとも消費税法上は、そうすることについて特段の制限はないようです。

 

 

1. 免税事業者の請求書等

まず、インボイス制度における免税事業者の位置付けは、以下の記事のとおりです。

 

また、インボイス制度の下では、適格請求書類似書類等の交付が明確に禁止されているため(詳細はこちら)、免税事業者がインボイスに類似した請求書等を交付するのはアウトです。

ただし、当然のことですが、免税事業者も普通の(つまり、インボイスに該当しない)請求書等は交付できます。

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2. 消費税額を記載することの可否(現行制度)

では、免税事業者が、請求書等に「消費税額」を記載することはできるのでしょうか?

まず、現行制度についてですが、国税庁は、色々なところで、「消費税の仕組み上、そういうことは予定されていない」と言っています。

この言い方からもわかるように、現行制度上、免税事業者が請求書等に「消費税額」を記載することについて、消費税法上、特段の制限はありません

予定はされてないけど、「消費税額」を記載しても構わないということですね(たぶん)。

変ですけど。

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3. 消費税額を記載することの可否(インボイス制度)

では、インボイス制度の導入後はどうなるでしょうか?

答えは、『消費税インボイス制度の実務とQ&A』という書籍に書いてありました。はっきりとは言いませんが、インボイス通達の逐条解説を収録している大蔵財務協会さんの本なので、そういうことです。

 

端的には、「インボイス制度の導入後も、免税事業者が交付する請求書等に「消費税額」を記載することについて、消費税法上、特段の制限はありません」とのことです。

現行制度と変わらないんですね。

ただ、当然ながら、相手方で仕入税額控除の適用に制限があるため(詳細はこちら)、相手方が誤認しないようにしなければならないそうです。

適格請求書類似書類等の交付が明確に禁止されているのに、消費税額を書くことに制限がないというのは、感覚としては、ちょっとどうかなと思いますが。

まあ、免税事業者に配慮しないと怒られるとか、色々あるんでしょうね。

4. インボイス類似書類への該当性(2022年8月追記)

上記のとおり、インボイス制度の下では、適格請求書類似書類等の交付が明確に禁止されており、違反すると罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)がありますが、この点について、税務通信(3713~3715号)の財務省主税局の人が参加する座談会の記事で言及がありました。

端的には、免税事業者が消費税額を別途記載することは予定されていないものの、免税事業者が請求書等に消費税を書いたからといって、インボイス類似書類(適格請求書類似書類等)には該当しないとのことです。

レベルが高すぎて私の理解の範疇を超えていますが、「課税事業者であっても、適格請求書発行事業者とは限らないから」というのが主たる理由みたいです。免税事業者が請求書に消費税額を記載していれば、それを受け取った側は、課税事業者と誤認するかもしれないけど、「課税事業者=適格請求書発行事業者」ではないから、それを適格請求書とは誤認しない、というロジックなんでしょうか。

「インボイス発行事業者でなくても課税事業者というのは十分あり得ます」とのことなのですが、どういう状況を想定されてるんでしょうか? また、「登録番号の記載がない限りはインボイスだと誤認することはないのかな」みたいなコメントもありますが、こういうの、実務をやってる人たちが見て、どう思うのかなと思います(私はコメントを控えますが)。

今日はここまでです。

では、では。

 

■インボイス制度に関する記事の一覧はこちら

 

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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