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繰延税金資産の回収可能性の判断③:将来の課税所得の見積り

最近は、決算時によく揉めるテーマについて、ちょっとずつ書いており、いまは繰延税金資産の回収可能性のお話です。

 

1. 繰延税金資産の回収可能性の判断で揉めるポイント

繰延税金資産の回収可能性の判断について、監査法人と揉める(議論になる)ポイントとして以前に書いたのは、以下の3つです(単に私がよく遭遇するものです)。

① 企業の分類(1~5)について、分類2・3の「臨時的な原因」の解釈
② 同じく、分類4の「重要な税務上の欠損金」の解釈
将来の(一時差異等加減算前)課税所得の見積り

今日は、このうち、③将来の(一時差異等加減算前)課税所得の見積りについて考えていきたいと思います。

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2. 将来の(一時差異等加減算前)課税所得の見積りの問題

前提として、繰延税金資産の回収可能性を検討するにあたっては、合理的な仮定に基づく業績予測によって、将来の課税所得を見積る必要があります。

もう少し正確に言うと、考えたいのは、将来の「一時差異等加減算前の」課税所得の見積りなので、見積もる対象は以下の算式のとおりです(より正確にはこちらをご覧ください)。

将来の税引前当期純利益 ± 対応する一時差異「以外」の差異

つまり、将来の税引前利益を見積もるだけでなく、そこに含まれる損金不算入(社外流出)の交際費等や寄附金、逆に益金不算入(社外流出)の受取配当金などもセットで見積もるということです。

3. 適用指針には何が書いてあるか

一時差異等のスケジューリングはある意味技術的なお話ですが、この将来の(一時差異等加減算前)課税所得の見積りについては、純粋な将来の見積りだと思います。

なので、単に事業計画等の精度の問題ともいえますが、まずは適用指針の内容を確認します。

この点について、適用指針が言っていることは、主に以下の2点です。

(1) 適切な権限を有する機関の承認を得た業績予測を基礎とすること
(2) その業績予測の前提となった数値を、社内外の情報と整合的に修正して、課税所得を見積もること
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(1) 基礎となるのは機関決定された事業計画等

(1)の業績予測は、中長期計画、事業計画または予算編成の一部等その呼称は問いませんが、ベースとすべきは、あくまでも機関決定された事業計画等だということです。

逆に言うと、繰延税金資産の回収可能性を判断するためだけに、将来の課税所得を見積もることはできません。

(2) 外部情報または内部情報に基づく修正

(2)の社内外の情報というのは、具体的には、外部情報(経営環境等の企業の外部要因に関する情報)と内部情報(企業が用いている内部の情報)を意味します。

端的には、これらの社内外の情報によって業績予測を修正するわけですが、このうち、内部情報には以下が含まれることとされています。

過去における中長期計画の達成状況
・予算やその修正資料
・業績評価の基礎データ
・売上見込み
・取締役会資料

この中で実務上重要なのは、圧倒的に「過去における中長期計画の達成状況」だと思います。

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4. 業績予測の合理性(ちょっと雑談)

ちなみに、昔の監査委員会報告第66号では、将来の業績予測について、会社の現状の収益力等を勘案し、「明らかに合理性を欠く業績予測であると認められる場合には」、適宜その修正を行った上で課税所得を見積る必要があるとされていました。

なので、監査法人から事業計画の修正を求められると、「うちの事業計画、明らかに合理性を欠いてますか?」と聞き返すのが通常の対応(?)だったと思います。

一方で、適用指針では、この表現は踏襲されていません。

これは、「企業自身が明らかに合理性を欠く業績予測であると認める状況は想定しにくい」ことを踏まえたものらしいです。

確かにそうですけど、逆に監査法人から「おたくの事業計画、合理性を欠いてますよ」というのも言いづらいのではないかと。。。

いずれにせよ、「将来の業績予測は合理的な金額であるべき」という趣旨を変えることを意図した変更ではないとされているので、「合理性を欠いてますか?」という問いかけは依然として有効なのかもしれません。

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5. 過去における中長期計画の達成状況

話を戻すと、上記のとおり、将来の課税所得の見積りにあたっては、業績予測の前提となった数値を、外部情報や内部情報と整合的に修正する必要があり、この点は昔の66号よりも、はっきりと書いてあります。

課税所得を見積もるのは経営者ですが、実質的にチェックするのは監査法人なので、外部情報のほうは、なかなか議論が難しいと思います。

一方で、内部情報のうち、監査法人が俎上に上げやすいのが、上記のうち、「過去における中長期計画の達成状況」という要素です。

私はあまり詳しくないですが、事業計画の位置付けについては、「目標」に近い企業と「予測」に近い企業があると思います。そういった事業計画の性質は、過去の計画達成状況に表れてくるのではないでしょうか。

また、「過去における中長期計画の達成状況」は、文字どおり「過去」の情報なので、監査法人としても議論しやすい要素だと思います。

なので、以下の算式が、目安となる利益水準のイメージかと思います(私が勝手にそう考えているだけですが)。

中長期計画における(見積)税引前当期純利益 × 過去の平均的な計画達成割合(%)

6. 業績予測修正時の整合性確保

ちなみに、もし事業計画を修正するなら、整合性の確保には気を配る必要があります。

仮に売上高の水準から修正していくのであれば、変動費や固定費の割合が問題になりますし、もっとざっくりと見積もる場合であっても、一時差異以外の差異(交際費や寄附金、受取配当金など)も併せて修正する等々を考えなければなりません。

機関決定された事業計画等をそういうふうに修正していくのは、なかなか勇気のいる作業だと思いますが。。。

また、別の目的で将来情報を取り扱っている場合、例えば、減損会計で使用価値を算定している場合、その情報との整合性も考える必要があります。

7. 最後に

このシリーズでは、繰延税金資産の回収可能性の判断について書いてきました。

これは企業の方々のお手伝いをしていて強く感じるところですが、こういうテーマは、決算になる前から監査法人とちょっとずつでも話したほうがいいです。

期末監査の最後のほうでサプライズはいらないので。

また、このテーマは、監査法人とのコミュニケーションがうまくいかず、私も企業の方々と一緒に「主張すべき内容」を整理する機会があります。

そういうケースでは、単純に企業の考え方を基準に沿った表現に整えたり、根拠資料を準備したりしてるだけなので、ちょっと空しかったりもします。こういうのって、何とかならないもんですかね。

繰延税金資産の回収可能性のお話は今日でおしまいです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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