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繰延税金資産の回収可能性の判断②:「重要な税務上の欠損金」とは

最近は、決算時によく揉めるテーマについて、ちょっとずつ書いており、いまは繰延税金資産の回収可能性のお話です。

繰延税金資産の回収可能性の判断で揉めるポイント

繰延税金資産の回収可能性の判断について、監査法人と揉める(議論になる)ポイントとして以前に書いたのは、以下の3つです(単に私がよく遭遇するものです)。

① 企業の分類(1~5)について、分類2・3の「臨時的な原因」の解釈
② 同じく、分類4の「重要な税務上の欠損金」の解釈
将来の(一時差異等加減算前)課税所得の見積り

今日は、このうち、②分類4の「重要な税務上の欠損金」の解釈について考えていきたいと思います。

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分類4の「重要な税務上の欠損金」の解釈の問題-(分類3)から(分類4)に落ちると大ダメージ

あんまり前提条件は細かく書かないですが、企業が(分類3)に該当するための要件の1つとして、過去3 年及び当期のいずれの事業年度においても「重要な税務上の欠損金」が生じていないことがあります(分類2も同じです)。

逆に、過去3 年または当期において「重要な税務上の欠損金」が生じているものの、翌期において(一時差異等加減算前)課税所得が生じることが見込まれる企業は、(分類4)に該当します(そうでなければ、(分類5)など)。

分類3と分類4って、実務上は結構大きな分かれ目ですよね。

分類3なら、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)の一時差異等加減算前課税所得の見積額が使えますが、分類4になると、翌期の見積額だけなので、単純には繰延税金資産が1/5以下になるイメージです(実際には、スケジューリングなんかも関わってきますが)。

なので、税務上の欠損金が生じている場合、それが「重要な税務上の欠損金」に該当するかどうかが議論になるわけです。

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欠損金であり、繰越欠損金ではない

まず、議論以前の問題ですが、ここで問題になっているのは、各事業年度の税務上の欠損金です。

繰越欠損金の残高ではありません。

つまり、ストック数値で議論するのではなく、あくまでもフロー数値で議論するということです。そのフロー数値が、会計上の損失ではなくて、税務上の欠損金というだけで。

なぜこんなことを言うかというと、昔の監査委員会報告第66 号では、企業の分類の際に、「期末における重要な税務上の繰越欠損金」の存在等を考慮すべきこととされていたからです。つまり、昔はストックを見る必要があったということですね。

ただ、(分類1)から(分類3)の分類は、課税所得を見るので、基本フローの話です。現在の適用指針では、それに合わせる形で、「期末に重要な税務上の繰越欠損金が存在するかどうか」ではなく、「過去3 年または当期において重要な税務上の欠損金が生じているかどうか」を確認することになっています。

このあたりは、「66 号」と聞いてピンとくる方は、要注意だと思います。同じく、連結上の「のれん」のことを「連結調整勘定」と言いそうになる方も、もっと注意です(私調べでは、2018年にポロっと「連結調整勘定」と言ってしまった企業の方を観測したのが最後です)。

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税務上の欠損金は重要か

税務上の欠損金が「重要な税務上の欠損金」に該当するかどうかは、上記のとおり重要なお話なのですが、適用指針は、「税務上の欠損金が重要かどうか」を判断する基準を明確には示していないと思います。

なので、個人的な見解に過ぎませんが(そもそもこのブログはすべて個人的見解ですが)、欠損金の重要性を判断するときには、他の事業年度の(欠損金控除前)課税所得の水準と比較すべきだと考えています。

つまり、課税所得の過去の実績値や将来の見込値と比較するということです。

企業の分類の話なので、フロー数値同士で比較するのが自然ですし、突き詰めると、「ちゃんと欠損金を上回る課税所得が発生する(している)のか」が重要な視点なので。

適用指針の考え方

この点、もうちょっと補強すると、1つには適用指針で、別の論点について、そのような考え方を示しているところがあります(直接的にではないですけど)。

具体的には、過去3 年において「重要な税務上の欠損金」が生じており、(分類4)に係る分類の要件を満たす場合の取扱いです(これは「重要な」税務上の欠損金と認定した後の話なので、今回の議論とは異なります)。

すなわち、そういう場合でも、その重要な税務上の欠損金が生じた後に、課税所得が生じたことにより、当期末において税務上の繰越欠損金が存在しないことが見込まれるときには、(分類2)または(分類3)に該当するものとして取り扱われる可能性があることとされています。

つまり、「発生した税務上の欠損金」 vs. 「その後の課税所得」という考え方です。

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会計基準の考え方(注記に関して)

もう1つ、会計基準(「税効果会計に係る会計基準」の一部改正)のほうにも、この論点とは異なりますが、税務上の「繰越」欠損金(つまり、ストックのほう)の重要性に触れている部分があります。

具体的には、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するにあたり、税務上の「繰越」欠損金の額が「重要であるとき」には、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額を区分して記載する必要があります。

そして、この判断でいう「重要であるとき」には、例えば、「税務上の繰越欠損金の控除見込額(課税所得との相殺見込額)が将来の税負担率に重要な影響を及ぼす場合」が含まれることとされています。

DCFで価値算定を行う場合をイメージしても、財務諸表利用者にとって、将来の税負担率は重要な要素なので、これは個人的に納得できるところです。

実際には、税負担率の予測にあたっては、「税務上の繰越欠損金の繰越期間において課税所得が生じるかどうか」が重要です。

これも「繰越」欠損金の重要性の話なので、今回の議論とはちょっと違うのですが、突き詰めると「課税所得との相殺見込額」が重要という点は変わらないのではないかと思います。

ちなみに、注記のほうの重要性の判断でいう「重要であるとき」には、もう1つ、純資産の額に対する税務上の繰越欠損金の額(×法定実効税率)の割合が重要な場合も含まれますが、これはフロー数値との比較には使いづらいかもしれません。

【2021年4月追記】
大手監査法人の書籍で、「純資産の額に対する税務上の繰越欠損金の額(×法定実効税率)の割合」に関する考え方について、上記と異なる内容が書いてあるものがあった(教えてもらった)ので、以下の記事にまとめています。
オススメの書籍紹介:『こんなときどうする? 「会計上の見積り」の実務』 

最後に

企業側としては、監査法人から、税務上の欠損金が「重要な税務上の欠損金」に該当するのではないかという懸念を示された場合、「何と比較して」重要性を判断したのかを明確にしてもらう必要があると思います。

極めて当然の話なのですが、これがちゃんとできていないケースが実際にあるためです。

そんな状況だと、絶対に議論が噛み合わないので、敢えて焦点を明確にしたくない場合を除いては、焦点を明確にした上で議論したほうが生産的だと思います。

今日はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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