第1回 再販売価格基準法(RP法)をわかりやすく
今回から、また移転価格税制の新シリーズです(移転価格税制コモディティ化計画の目次はこちら)。
Table of Contents
1. 「再販売価格基準法(RP法)&原価基準法(CP法)」シリーズ
今回から少しの間、「再販売価格基準法(RP法)&原価基準法(CP法)」シリーズです。
まず、今回は再販売価格基準法(RP法: Resale Price Method)について。
2. 租税特別措置法上の定義
早速ですが、再販売価格基準法の定義を見てみましょう。
租税特別措置法(66の4②一ロ )では、再販売価格基準法は、以下のように定義されています。
国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(…「再販売価格」…)から通常の利潤の額…を控除して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法
ちなみに、上記の「通常の利潤の額」は売上総利益ベースです。つまり、「売上-売上原価」であり、販管費は加味しないということです。
3. 租税特別措置法上の定義を日本語で
上記の定義をもう少しだけかみ砕いていうと、再販売価格基準法というのは、「同種または類似の棚卸資産を、非関連者から購入した者が、非関連者に対して販売した取引」を比較対象取引とする方法ということになります。
日本語に翻訳すると、「販売会社の外部への販売価格をもとに独立企業間価格を逆算する方法」ってことですね。
つまり、以下の例のように、第三者(非関連者)への再販売価格から通常の利潤を控除して計算した金額をもとに独立企業間価格を算定する方法です。
通常の利潤が売上総利益ベースなので、「再販売価格-売上総利益」で、適正な仕入価格としての独立企業間価格を算定するイメージです。
事後の視点でいえば、検証対象の売上高総利益率を(比較対象取引との比較で)見る感じですね。
なお、上記のように、再販売価格基準法は、買手がその棚卸資産を非関連者に販売することが前提なので、輸入側(上図の「国外関連者」)に適した独立企業間価格算定方法といえます。
4. 再販売価格基準法の特徴
再販売価格基準法の特徴を一言でいうと、「独立価格比準法に次ぐセカンド・ベストの方法だが、売上総利益を使うことがネックになって、公開情報から比較対象取引を見つけるのが難しい」ということです。
以下、順番に見ていきます。
(1) 再販売価格基準法の長所
再販売価格基準法が使う売上総利益は、ある意味販売価格(=原価+売上総利益)と近接した関係にあるので、独立企業間価格の算定方法としては、独立価格比準法に次いで直接的な方法といえます。
これが再販売価格基準法の長所です。
また、再販売価格基準法では、国外関連取引の対象資産等と「同種または類似の」資産等に係る非関連者間取引を選べばよいので、独立価格比準法よりは比較対象取引が見つけやすい面はあります。
独立価格比準法だと、資産等についての厳格な同種性が求められますが、なかなか「同種」とまでは言えないんですよね。
ちなみに「類似」という概念も、「同種」という概念と同じで、棚卸資産についていえば、性状・構造・機能等の面において類似であるという意味合いです。
(2) 再販売価格基準法の短所
だからといって、情報の入手可能性の観点で、再販売価格基準法が優れてるかというと、あんまりそんなことはないです。
再販売価格基準法で使う売上総利益(の水準)については、取引の当事者が果たす機能の差異の影響を受けやすいので 、実際には公開情報から比較対象取引を見いだせない場合が多いと思います。
例えば、検証対象である海外子会社はあんまり広告宣伝活動を行っていない一方、比較対象のほうはめちゃくちゃ広告宣伝費を投下して販売促進活動を行っていたりとか、そういう機能の差異のイメージです。
なので、この点は再販売価格基準法の短所と考えたほうがよさそうです。
逆にいうと、再販売価格基準法が使えるのは、機能の差異が把握しやすいケース、言い換えると、上図のような内部比較対象取引が存在するケースが多いと思います。
5. どちらを検証対象にするか
最後にもう1つだけ。
再販売価格基準法の場合、独立価格比準法にはなかったテーマもあります。
ずばり、「自社と国外関連者のどちらを検証対象にするか」ということです。
(1) 検証対象の当事者
これは後ほどお伝えする原価基準法や取引単位営業利益法でも同じなのですが、再販売価格基準法の適用にあたっては、国外関連取引の当事者のいずれか一方の利益指標を検証対象にします。
検証されるほうは「検証対象の当事者」とか呼ばれたりますが、上の例では海外子会社(国外関連者)が検証対象になっています。
(2) より単純な機能を果たすほうを検証対象に
じゃあ、どちらを検証対象とするかということなんですが、一言でいうと、「より単純な機能を果たすほう」です。
「機能」については、以前に散々お伝えしました。そういう機能分析に基づいて、より単純なほうを選んで、そっちを検証対象にするということです。
(3) 単純な機能=比較のしやすさ
なぜなら、機能が単純なほうが比較しやすいからです。単純な会社と複雑な会社、どっちが比較対象を見つけたり、実際に比較したりしやすいかを考えたら、何となくわかって頂けるのではないでしょうか。
そういう比較可能性が高い非関連者間取引を見いだすという観点から、「より単純な機能を果たすほう」を選ぶってことですね。
日本親会社と海外子会社を比べるなら、海外子会社のほうが機能は単純なことが多いと思います。ただ、もちろん例外はあって、子会社が主導的な立場で、親会社は子会社からの指示に従う形で製造や販売の一部を担うだけの立場であれば、親会社のほうが機能が単純と判断されるケースもあります。
なお、これは聞き流してもらってもいいですが、再販売価格基準法で比較対象取引を選定するときには、資産等の類似性よりも、国外関連取引の当事者が果たす機能の類似性が重要と言われています。とにかく「機能」が大事だってことですね。
じゃあ、今日はこのあたりで。
では、では。