インボイス制度:免税事業者からの課税仕入れと取引の対価の額(経理処理)
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、ここ数か月の議論のアップデートです。
今回のテーマは、免税事業者からの課税仕入れと取引の対価の額です。
税務通信(3756号)にめちゃくちゃわかりやすい解説があるので、詳細についてはそちらをどうぞ。
Table of Contents
1. 仕入税額控除の対象にならない部分=取引の対価の額
結論からいうと、インボイス制度導入後、免税事業者(適格請求書発行事業者以外)から課税仕入れを行った場合、税抜処理では、仕入税額控除の対象にならない部分を取引の対価の額に含めて経理処理する必要があります。
経過措置で仕入税額相当額の80%とか50%が仕入税額控除の対象になるので、残りの20%とか50%のお話です。
逆にいうと、この部分は「控除対象外消費税」として処理するわけではありません。この点に関して誤解しているケースが多いそうです(2023年6月時点のことみたいですけど)。
2. 控除対象外消費税ではない
当たり前といえば当たり前なのですが、免税事業者などからの課税仕入れのうち、仕入税額控除の対象にならない部分は、そもそも消費税額等ではありません。
なので、税抜処理する場合、その金額は普通に取引の対価の額に含める必要があり、逆にいうと、「控除対象外消費税額等」には該当しません。
「95%ルールと混同しがち」みたいなことが書いてありますが、本当にそんな人がいるのかの真偽のほどは明らかではありません(笑)
3. 法人税の課税所得計算への影響
ちなみに、これを間違うと、法人税の課税所得計算にズレが生じます(多くの場合)。
控除対象外消費税額等であれば、資産に係る一定のものを除いて、その事業年度に損金算入できる一方、資産の対価の額であれば、(その事業年度では)損金算入できない部分があるためです。
例えば、減価償却資産の取得に係るものであれば、取得価額に算入するのが正しい処理なので、仮に誤って損金算入したとしたら、償却限度額を超える部分を減価償却の超過額としてその事業年度の所得金額に加算する必要があります。
同様に、棚卸資産を取得に係るものであれば、期末在庫対応部分を加算する必要があります。めんどくさ。
もちろん、仕入税額控除の対象にならない部分が経費支出(損金)に係るものであれば、いずれにせよ損金算入されるので、申告調整は不要です。
4. この税務通信の記事は読んだほうがいい
ちなみに、この税務通信の記事ですが、めちゃくちゃコンパクトに要点がまとめられています。
しかも、図の使い方も効果的で、わかりやすいし。
誤解していない方でも、一読の価値ありだと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。