資産除去債務:建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合
今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。
色々とあって、会計基準を見返しているところです。
Table of Contents
1. 建物等の賃借契約における原状回復義務
建物等の賃借契約においては、一般に賃借建物等に係る内部造作等(有形固定資産)の除去などの原状回復が契約で要求されています。
この場合、それに関連する資産除去債務の計上が求められるケースがあります(こちら)。
2. 建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合の会計処理
このようなケースで、賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができます。
仕訳で見ると、以下のような感じです。
敷金の回収が見込めないというのは、要は、原状回復費用に充てられるということですが、念のため、上記の仕訳の金額は、敷金の回収が見込めない部分の全額ではなく、そのうち当期の費用配分額ということです。
この処理に関しては、税効果の文脈で以下の記事に書きました。
3. この会計処理が認められる背景
上記はある意味で特殊な会計処理であり、「資産除去債務と対応する除去費用」と「敷金」の会計処理は、本来個別に行われるべきものです。
ただ、上記のような処理が認められるのは、単純に事務(実務)負担を考慮したということのようです。資産除去債務については、もっと他でも考慮したほうがいいことがありそうですけど。
あとは、建物等の賃借契約において敷金を支出している場合、賃借建物等に関連する資産除去債務について、通常の両建処理を行うと、敷金と資産除去債務に対応する除去費用が二重に資産計上されるという見方もあります。
これはそもそも除去費用を資産計上することによる問題のような気もしますが。
4. 敷金の償却期間
いずれにせよ、この処理による場合、当期の負担に属する金額(つまり、毎期の償却金額)は、合理的な償却期間に基づいて算定することが適当とされています。
つまり、同種の賃借建物等への平均的な入居期間などを参照すべきということです。
ただ、そのような償却期間等を算定することが困難で、決算日現在で入手可能なすべての証拠を勘案して最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合には、所定の事項(資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨及びその理由)を注記する必要があります。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。