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資産除去債務:特定の有害物質の除去(アスベスト・フロン・PCBなど)

今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。

色々とあって、会計基準を見返しているところです。

 

1. 資産除去債務とは

「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいいます。

また、この場合の「法律上の義務及びそれに準ずるもの」には、有形固定資産を除去する義務のほか、「有形固定資産を除去する際にそこに使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務」も含まれます(有形固定資産の除去そのものは義務でなくても)。

2. 特定の有害物質の除去

順を追ってご説明すると、まず、企業が所有する有形固定資産に特定の有害物質が使用されており、有形固定資産を除去する際、その有害物質を一定の方法により除去することが、法律等により義務付けられている場合があります。

そして、上記のとおり、有形固定資産に使用されている有害物質自体の除去義務は、資産除去債務に含まれることとされています(有形固定資産自体を除去する義務はなくても)。

ロジックとしては、将来、有形固定資産の除去時点で有害物質の除去を行うことが不可避であるならば、現時点でその有害物質を除去する義務が存在しているものと考えざるを得ないということらしいです。

個人的には、このあたりがイマイチ良くわかりません。有形固定資産自体の除去に関する法律上の義務またはこれに準ずるものがあるケースに限って資産除去債務が計上されるのなら、わかりやすいのですが、実際にはそうではないということです。

3. 資産除去債務の対象になるのは有害物質の除去費用のみ

話が逸れましたが、この場合に資産除去債務の計上の対象となるのは、有害物質の除去に直接関わる費用のみです。

有形固定資産の除去費用全体というわけではありません。

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4. 有害物質の例

次に、開示事例について。

資産除去債務の注記では、以下のように単に「有害物質」とだけ記述しているものもあります。

(資産除去債務関係)
資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上しているもの
イ 当該資産除去債務の概要
…また、一部の製造設備に使用されている有害物質を除去する義務に関しても資産除去債務を計上しております。

…また、一部の倉庫・建物等に使用されている有害物質を除去する義務に関しても資産除去債務を計上しております。

ただ、アスベスト・フロン(ガス)・PCBみたいに有害物質を特定しているケースのほうが多そうな気がします(この3つがすべて揃ってるっぽい注記事例が以下)。

事業用資産の一部に関する、PCB特別措置法、石綿障害予防規則、フロン回収・破壊法が規定する資産除去時の有害物質除去義務、並びに不動産賃借契約に伴う原状回復義務であります。

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5. いくつかのトラップ

冒頭にも書いたのですが、私は資産除去債務の話が苦手です。

開示事例に絡めて書くと、例えば、石綿障害予防規則によるアスベストの除去については、上記のとおり、資産除去債務が計上されます。

一方で、飛散防止措置等については、資産除去債務が計上されないらしいです(知らんけど)。環境修復や修繕に該当するという判断なのかなあとは思いますが(つまり、「除去」に該当しないということ。詳細はこちら)。

ところが、実際には「資産除去債務の概要」のところで、以下のように書いている注記事例もあり、このあたりもよくわからないなあと思います。

(資産除去債務関係)
資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上しているもの
イ.当該資産除去債務の概要
建物の石綿飛散防止対策に関する費用であります。

…労働安全衛生法・石綿障害予防規則・大気汚染防止法に基づくアスベストの飛散防止等の対策を講じる義務等であります。

同じく、PCBの廃棄費用についても、倉庫等にPCBを保管し除去待ちの場合は、資産除去債務に該当しない等々のお話もあります。

資産除去債務を計上するのか、あるいは引当金などで処理するのか(または固定資産の減損処理か)によって損益も動くので、このあたりはもうちょっとすっきりするといいなと思います。

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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