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固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報の開示

引き続きセグメント情報のことを書きます。

今回は、固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報の開示について。

 

1. 財務数値への影響がわかるケース100

少し前に、『この取引でB/S・P/Lはどう動く? 財務数値への影響がわかるケース100』という本を書きました(書評のご紹介はこちら)。

 

2. 減損損失に関するコラム

この本の「ケース33. 固定資産を減損処理する」という項目のコラムで、以下のような内容を書きました。

説明しづらい減損損失の発生要因
 減損損失が計上されるケースでは、前提として資産(または資産グループ)に減損の兆候が生じています。「減損の兆候」としては、経営環境の著しい悪化や資産等の市場価格の著しい下落などのほか、「その資産等が使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっている(またはその見込みである)」ことも該当します。また、投資計画の中止や変更に関係して、「資産等が当初予定と異なる用途に転用されることや、遊休状態になったこと」も減損の兆候として例示されています。
 ここからわかるように、減損損失の発生要因は、本来外部に出したくない性質のものです。しかしながら、それはどうしても注記や決算説明で表に出さざるをえないため、説明の仕方はよく考えておく必要があります。といっても、なかなか減損損失の計上を前向きに説明するのは難しいので、とにかくタイムリーに、淡々と正確な情報を提供することが重要ではないかと思います。逆に「懸案だった含み損失を一掃しました!」というような過度にポジティブな説明は、個人的には少し怪しさを感じてしまいます。

このコラムについては、企業の方々から、「余計なこと言うなや」等々のポジティブなコメントを頂きました。

それはそれとして、ここで言いたいのは、減損損失絡みの情報はあまり外には出したくないということです。

一方で、セグメント情報でも、減損損失に関しては、一定の開示が求められています。

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3. 報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報

具体的には、固定資産の減損損失を計上した場合、「報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報」において、その報告セグメント別の内訳を開示する必要があります(セグメント情報の中で開示する形でもOKです)。

また、報告セグメントに配分されていない減損損失がある場合には、その額及びその内容を記載する必要があります。

純粋なマネジメント・アプローチによれば、経営者が実際に意思決定に用いている情報の中に減損損失が含まれていなければ、それを開示する必要はないはずです。一方で、減損損失は、減価償却費と同様、資産残高に重要な影響を及ぼすということで、従来から開示されてきた重要な項目なので、開示を求めるという整理になっているようです(その他、国際的な会計基準との整合性なども)。

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4. 報告セグメントごとの減損損失が見える意味合い

いずれにせよ、減損損失については、外部からでも、「それがどの報告セグメントから生じたものか」や「減損損失がその報告セグメントの業績にどのような影響を与えたのか」が読み取れるということです。

言うまでもなく、それがその企業グループの主要な事業から生じているのか否かという観点は重要です。

また、もう1つ重要なのは、「減損損失が計上されるか否か」は、端的にはその企業の将来見通しを示しているという点です。すなわち、減損損失が計上されるということは、(少なくとも特定の事業の)業績が悪化しており、経営者がその事業の将来性を悲観的に捉えている可能性があることを示しています。

このあたりは、減損注記やMD&A(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)とセットで分析することが多いと思われます。

今日はここまでです。

では、では。

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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