第5回 価格調整金とは(国外関連者に対する寄附金との関係)
引き続き「国外関連者に対する寄附金」シリーズです。
Table of Contents
1. 価格調整金とは
今回は国外関連者に対する寄附金に関連する論点として、価格調整金のお話です。
前提として、国外関連者(海外子会社など)との利益配分については、基本的には取引価格の決定を通じて行われるため、必ずしも当初予定したとおりに利益を配分できるとは限りません。
そこで、実務的には、その予定からの乖離を埋めるために、既に行われた取引の価格を事後的に変更する場合もあります。その際、日本親会社と国外関連者との間でやり取りされる金銭が「価格調整金」です。
このような価格調整金が自由に使えれば、グループ内で思い通りの利益配分ができますが、実際にはそう簡単にはいかず、価格調整金については、常に「その支払いが取引価格の修正であるかどうか」、逆にいうと「単なる寄附金ではないか」が問題になります。
2. 価格調整金を支払っている場合に必要な検討
日本親会社が国外関連者に価格調整金を支払っている(費用を計上している)場合には、以下の要素が総合的に検討されます。
(2) 事前の取決めの内容
(3) 算定方法及び計算根拠
(4) 支払決定日
(5) 支払日
このような検討の結果、その支払いが合理的な理由に基づくものであれば、寄附金扱いにならず、取引価格の修正が行われたものとして、移転価格税制の議論に移行できます。
そうじゃなければ、たぶん国外関連者に対する寄附金の問題になります。
3. 寄附金ではなかったとしても
注意したいのは、移転価格税制の議論に移行できた場合でも、価格調整金の支払いが無条件で損金として認められるわけではないということです。
あくまでも、次の段階として「価格調整金考慮後の取引価格が移転価格税制上問題ないか」をチェックされることになるということですね。
今日はここまでです。次回は、価格調整金に関するケースを確認したいと思います。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。