第16回 日本側がIGSの対価の支払側になる場合の取扱い
引き続き「役務提供取引(IGS)」シリーズです。
Table of Contents
1. 日本企業が役務提供を「受ける」側に回る場合の取扱い
ここまでは日本親会社が海外子会社に対して役務提供を行う場合についてお伝えしてきました。
しかしながら、日本企業が役務提供を「受ける」側に回ることもあります。
例えば、外資系企業で海外の親会社(あるいは地域統括会社)から役務提供を受ける場合が典型ですが、日本親会社が海外子会社に業務委託を行う場合なども想定されます。損益を付け替えたいときとか(笑)
このようなケースでも、基本的な考え方は同じです。つまり、逆向きに検討すればよいだけです(事務運営指針でも、そんな感じで書いてあります)。
2. 役務提供対価の支払いの損金性に関する問題
しかしながら、実態としては、それ以前の問題のこともあります。海外子会社に損益を付け替えるためだけに、無理矢理業務委託をして対価を払ってるような場合ですね。
そんな感じで、税務調査の場面で、日本から海外への役務提供対価の支払いの損金性が問題になることは多いため、注意が必要です。
そういうケースでは、「対価の額の適否を検討する」という建付けで、「国外関連者から受けた役務の内容等が記載された書類等」の提出を求められるのが通常です。要は、レポートとか、「海外子会社に何をしてもらったのか」がわかる資料ということです。
事務運営指針においても、法人が国外関連者に対し支払うべき役務提供に係る対価の額の妥当性を検討するため、「役務提供の内容等が記載された書類」の提示または提出を求めることとしており、これには、例えば、帳簿や役務提供を行う際に作成した契約書が該当する旨の記載があります。
3. 税務調査で確認されるポイント
この点について、参考事例集では、以下について内容を確認することとしています。
こういった書類等の検討の結果、当該国外関連者が行ったとする役務提供の実態や対価の額の具体的な計算根拠等の確認ができないときには、多くの場合、寄附金の問題になります。国外関連者に対する寄附金は全額損金不算入の取扱いになるので、注意が必要ですね。
これで役務提供取引のシリーズは終了です。
次回は、役務提供取引の記事をまとめて、終わりにしたいと思います。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。