第8回 移転価格税制における「市場の状況」とは
引き続き 「国外関連取引の内容等の検討」シリーズです。
Table of Contents
1. 国外関連取引の内容等の検討という文脈
すっかり「機能及びリスク」に染まってしまいましたが、いまお伝えしているテーマは、国外関連取引の内容等の検討です。
比較可能性分析は確かに重要ですが、比較対象取引の選定を適切に行うためには、前段階として、国外関連取引の内容等を十分に理解しておかなければならないんでしたよね。つまり、「どういったポイントについて比較するか」という比較を行うための「諸要素」について的確に把握しておく必要があるということです。
2. 比較を行うための諸要素(5つ)
「え? 諸要素って何?」って思われた方、以下が通達に書かれている諸要素です(第1回 国外関連取引の内容等の検討=前処理でお伝えしました)。
②売手または買手の果たす機能
(+負担するリスク+使用する無形資産のうち重要な価値のあるもの)
③契約条件
④市場の状況
⑤売手または買手の事業戦略(市場への参入時期等も考慮する)
で、このうち、②の売手または買手の果たす機能や負担するリスクを分析するのが超重要だったので、この機能とかリスクというものを延々と見てきたわけです。位置付けは再確認できたでしょうか?
今のお話が新鮮だった方は、また前に戻って頂くと、このブログをある意味無限ループで楽しんで頂けるんじゃないかと思います。
3. 市場の状況とは
話を戻すと、今日はこのうち、次の要素、④市場の状況に進みます(③契約条件はここで確認済みです)。
「市場の状況」というと、めちゃくちゃ漠然としているんですが、通達に、もうちょっと詳しく書いてあります。
具体的に市場の状況の「どこを見ればいいか」、「どういう項目の影響を考慮すればいいか」というと、以下のような例示があります。
- 取引段階(小売りまたは卸売り、一次問屋または二次問屋等の別)
- 取引規模
- 取引時期
- 政府の政策(法令、行政処分、行政指導その他の行政上の行為による価格に対する規制、金利に対する規制、使用料等の支払に対する規制、補助金の交付、ダンピングを防止するための課税、外国為替の管理等の政策)
一般的な事項としては普通にわかることですが、問題はこれが移転価格税制にどう影響するかってことですよね。
4. 市場の状況と移転価格税制の関係
少しだけ例を挙げます。
(1) 取引段階
取引段階についていえば、同じ商品であっても、卸売り段階と小売り段階で価格の付き方は違います。少なくとも、卸売業者が自らの業務の対価として得るマージンの分だけの差はあるので。
そうすると、国外関連取引を比較対象取引(の候補)と比較しようとしたときには、その価格差を調整する必要があり、そういう差異調整を行うために、取引段階を把握しておく必要があるということです。
また、取引段階があまりに違いすぎると、そもそも比較対象取引になりえない(差異の調整ができない)ケースもあるかもしれません。
(2) 取引規模
もう1つ、取引規模についていえば、ボリューム・ディスカウントみたいなものを想像してもらえればいいと思います。
取引規模によって価格差があるのであれば、その価格差を調整する必要があるということで。
今日はここまでです。次回は、この「市場の状況」について、移転価格文書(ローカルファイル)にどのように書くかという具体例を確認したいと思います。
では、では。