第2回 独立企業間価格の算定方法には何があるか?
引き続き「独立企業間価格の算定方法の選定」シリーズです。
Table of Contents
1. 独立企業間価格の算定方法の再確認
前回は、「独立企業間価格とは?」というところを確認しました。
今回は、その独立企業間価格の算定方法についての再確認ですが、独立企業間価格の算定方法のうち、以下の5つの方法の内容を簡単に再確認します。
(2) 再販売価格基準法(RP法)
(3) 原価基準法(CP法)
(4) 取引単位営業利益法(TNMM)
(5) 利益分割法(PS法)
以下では、日本親会社と海外子会社(=国外関連者)という関係の2社を想定して、どちらかを検証対象にするときには、海外子会社を選択することを前提とします。
ちなみに、以下の記事のほうがもうちょっと詳細に書いてあるので、よろしければそちらをご参照ください。
(1) 独立価格比準法(CUP法)
「似たような取引と価格を直接比較する方法」です。
つまり、同種の棚卸資産に係る非関連者との取引を比較対象取引として、独立企業間価格を算定する方法をいいます。
独立価格比準法は、比較対象取引を非常に厳格に選定し、価格自体を直接比較する方法なので、独立企業間価格の算定方法のなかで最も信頼性が高い一方、比較対象取引を見つけることは困難な場合が多いといえます。
(2) 再販売価格基準法(RP法)
「海外販売子会社の外部への販売価格をもとに独立企業間価格を逆算する方法」です。
つまり、第三者(非関連者)への再販売価格から通常の利潤を控除して計算した金額をもとに独立企業間価格を算定する方法をいいます。
再販売価格基準法は、買手がその棚卸資産を非関連者に販売することが前提になっているため、輸入側の販売会社(上図の「国外関連者(=海外販売子会社)」)に適した独立企業間価格算定方法といえます。
(3) 原価基準法(CP法)
「海外製造子会社の外部からの仕入価格などをもとに独立企業間価格を計算する方法」です。
つまり、第三者(非関連者)からの購入や製造に係る原価に通常の利潤を加算して計算した金額をもとに独立企業間価格を算定する方法をいいます。
原価基準法は、売手がその棚卸資産(原材料など)を非関連者から購入することが前提になっているため、輸出側の製造会社など(上図の「国外関連者(=海外製造子会社)」)に適した独立企業間価格算定方法といえます。
(4) 取引単位営業利益法(TNMM)
「検証対象の営業利益率がちょうどよくなるような取引価格を算定する方法」です。
つまり、取引単位ごとに、検証の対象とする会社(ここでは、海外子会社の前提)と類似の事業活動を行う会社の営業利益率とを比較することにより、独立企業間価格を算定する方法をいいます。
取引単位営業利益法は、主として一方の会社(海外子会社など)に単純な機能しかない場合に、その会社を検証対象とする形で使われることが多いです。
また、財務データベースから類似する企業(取引)を抽出するなど、公開情報から比較対象取引を見いだしやすく、使い勝手がよい点に特徴があります。だからこそ、取引単位営業利益法は、日本企業で非常によく使われるわけですね。
(5) 利益分割法(PS法)
「利益配分がちょうど貢献度に等しくなるような取引価格を算定する方法」です。
つまり、まずは国外関連取引に係る日本親会社と国外関連者の営業利益を切り出して、その合計額を両者の利益獲得への貢献度等に基づいて配分し、そのような利益配分になるように独立企業間価格を算定する方法をいいます。
利益分割法には、自社グループ内のデータのみで独立企業間価格を算定できるというメリットがあり、比較対象取引を見いだせない場合に適した独立企業間価格の算定方法といえます。
上図は、「寄与度利益分割法」と呼ばれる方法を前提にしていますが、利益分割法には、他にも利益配分を「基本的利益」と「残余利益」の2段階で行う残余利益分割法(RPSM: Residual Profit Split Method)などの方法もあります。
2. 独立企業間価格の算定方法の選定について
独立企業間価格の算定方法の選定については、これから見ていきますが、とにかく大事なのは、「ちゃんとした比較対象取引があるかどうか」ということです。
それがあれば、比較対象取引を用いる算定方法を採用できます。
でも、比較対象取引が見つからないこともあるので、その場合には、例えば、(5)の寄与度利益分割法を使うことを考えないといけないということです。
今回は、それぞれの独立企業間価格の算定について、さっぱりとした内容を再確認しました。
では、では。