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電子インボイス:適格請求書の電磁的記録による保存と仕入税額控除(仕入側)

2021年7月30日に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されたので(詳細はこちら)、その内容についてです。

0. この記事のポイント

インボイス制度の下で、仕入税額控除のために保存すべき請求書等には、適格請求書に係る電磁的記録も含まれます。自社が仕入側で電子取引を行った場合、消費税法の観点では、請求データ等を出力して書面により保存するという選択肢もありますが、法人税の観点では、書面による保存は不可なので(令和4年1月1日以後に行う電子取引)、結局は電磁的記録のままで保存しておくことが必要になります。

 

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1. 令和3年度税制改正による電子帳簿等保存法の改正

今日も、令和3年度税制改正による電子帳簿等保存法の改正に伴って、Q&Aが改訂されたというパターンのものです。

前回は売上側でしたが、今回は立場を入れ替えて、仕入側のお話です。

2. 提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法

消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)の下では、原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされています。

そして、保存すべき請求書等には、適格請求書に係る「電磁的記録」も含まれます。

このあたりは以下の記事に書きました。

 

3. 提供を受ける電磁的記録(電子インボイスなど)

「電磁的記録」については、前回まとめましたが、売手側の視点では、適格請求書の交付に代えて、得意先に請求書データ(適格請求書の記載事項を記録したもの)を送るようなイメージでしたね。

なので、仕入側の視点では、取引先から請求書を電子データで提供してもらうイメージで、これが「適格請求書に係る電磁的記録の提供を受ける」ことの意味合いです。

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4. 提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法

この場合に考えないといけないのは、提供を受けた(適格請求書に係る)電磁的記録の保存方法です。

繰り返しになりますが、取引先から適格請求書に係る電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、その電磁的記録を保存する必要があります。

Q&Aでは、電磁的記録の保存方法の選択肢として、一応は以下の2つをカバーしています。

(1) 電磁的記録のまま保存
(2) 出力して書面により保存

ただし、売上側の以下の記事でご説明したのと同じロジックで、実質的に(2)は選択肢になり得ず、(1)の一択になります。

 

5. 書面による保存は不可

Q&Aには「提供された適格請求書に係る電磁的記録の書面による保存」に関するQがあり、消費税法の観点では、提供を受けた電磁的記録を整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存することで、「仕入税額控除(に係る請求書等の保存要件)を満たす」というAもあります。

つまり、純粋に消費税法の観点では、(2)の書面による保存もOKということです。

ただ、法人税のほうでは、電子帳簿保存法の「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度」がネックになり、書面による保存は不可になります(令和3年度税制改正。2022年1月より)。

つまり、電磁的記録のままで保存しておくことが必要ということで、要は売上側の写しの保存方法と同じ話です。

ちなみに、このあたりの齟齬は、Q&Aでもそれとなく(目立たないように?)書いてあります。

【2022年5月追記】
Q&Aが改訂され、電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存に係る宥恕措置に言及されました。

大まかにいうと、以下のような感じです。

  • 令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に行う電子取引について、
  • 授受した電子データについて要件に従って保存できず、
  • そのことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、
  • かつ、保存義務者が、税務調査等の際に、税務職員からの求めに応じ、その電子データを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面の提示または提出をすることができる場合には、
  • その保存要件にかかわらず電子データの保存が可能となり、
  • また、その電子データの保存に代えてその電子データを出力することにより作成した書面による保存をすることも認められる
  • (注)この取扱いを受けるにあたり、税務署への事前申請等の手続は不要です。

    ただし、Q&Aにおいても、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、原則どおり「要件に従った電子データの保存が必要」と念押ししてあります。

    なお、電子帳簿保存法のほう(電子取引のデータ保存に係る宥恕措置)のより詳細な内容については、以下の記事にまとめています。

     

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    6. 電磁的記録のまま保存するために必要な措置

    次に、(1)の電磁的記録の保存について。

    上記のとおり、提供を受けた電磁的記録をそのまま保存することは可能ですが、一定の措置を講じる必要があり、その点もQ&Aに細かく書いてあります。

    具体的には(といっても超単純化していますが)、①タイムスタンプなどの改竄防止措置、②見読可能性の確保、③検索機能の確保などの要件を充足するようにしておかなければなりません(詳細は、以下の記事をどうぞ)。

     

    ただ、売上側の取扱いと同じく、それはどちらかというと電子帳簿保存法(電子取引関係)のほうの話になります(消費税法施行規則が、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則を参照する形になっているため)。

    なので、電子帳簿保存法のほうで問題にならないように保存しておけば、消費税法的にも大丈夫ということになります。

    今日はここまでです。

    では、では。

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    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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