インボイス制度:小規模事業者に係る2割特例と簡易課税の関係
2023年1月20日(たぶん)に財務省のウェブサイトに「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(以下FAQ)という資料が公表されました。
主な内容はこちらに書いたのですが、このブログでもその内容について少しずつ書いています。
今回は、小規模事業者に係る2割特例と簡易課税の関係について。
Table of Contents
1. 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
令和5年度の税制改正大綱には、大きく分けて4つの負担軽減措置がありますが、その中に「小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)」という項目があります(以下の記事をご参照ください)。
2. 「2割特例」と簡易課税の関係
この2割特例と簡易課税の関係について、FAQでは「免税事業者が登録申請書とともに簡易課税制度選択届出書も提出した場合、2割特例は適用できないのか」という内容のQがあります。
これについては、「簡易課税を選択していても、2割特例は使える」という回答になっています。それはそうですよね。
もう少し具体的には、以下のような回答内容です。
- 2割特例は、本則課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも、適用が可能
- 簡易課税制度の適用を受けるための届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を選択することは可能なので、簡易課税制度選択届出書を取り下げる必要はない
3. ややこしいQ
(1) ややこしい設定
ちなみに、FAQでは、もうちょっとややこしい人がいて(笑)、以下のような設定のQもあります。
- 免税事業者である個人事業者
- 登録申請書(令和5年10月1日登録)とともに簡易課税制度選択届出書を提出している
- 申告時に2割特例と本則課税を選択適用できるようにしたい
Qの内容は、「この場合、どのような手続きをすればよいか」というものです。
(2) ややこしい手続き
回答は、「令和5年12月31日までに(簡易課税制度選択届出書の)取下書を提出すればよい」という感じだと思います(たぶん)。
取下書とか、あまり詳しくないので、間違ってたらごめんなさいですが、1つ目の前提として、簡易課税制度選択届出書は、その届出書の提出可能な期限までは、取り下げが可能であると取り扱われています。
もう1つの前提として、免税事業者が登録申請を行った場合には、登録を受けた日から課税事業者となることができる経過措置が設けられており、この経過措置の適用を受ける場合、登録開始日を含む課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出することにより、その課税期間から簡易課税制度を適用することができます。
これらを組み合わせて考えると、上記の例では、簡易課税制度選択届出書は、令和5年12月31日まで提出可能です(個人なので)。
そうすると、同日までに取下書を提出することにより、その届出を取り下げることが可能になるということです。
(3) 取下書はフォーマットなし
ちなみに、FAQによると、取下書の書式は定められていないとのことです。
したがって、取下対象となる届出書が特定できるよう、以下の記載をして、署名の上、所轄の税務署まで提出することになるようです。
- 提出日
- 届出書の様式名(表題)
- 提出方法(書面またはe-Tax)
- 届出者の氏名・名称
- 納税地
- 提出した届出書を取り下げる旨
財務省(国税庁)も親切ですね。別にこれで好感度が上がることはないでしょうけど、中で働いている人たちは大変だろうなあと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。