インボイス制度:登録期限の実質延長で「困難な事情」の記載は不要に(令和5年度税制改正大綱)
今日(2022年12月16日)、令和5年度与党税制改正大綱が公表されました。
改正見込み事項のうち、普段このブログで取り扱っている項目だけ、適当に書こうと思います。
引き続きインボイス制度の関係で、登録手続きの柔軟化について。
Table of Contents
1. 期限までに登録申請書を提出できない場合の取扱い(見直し前)
インボイス制度については、制度開始の令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたければ、原則として、令和5年3月31日までに登録申請書を提出しておく必要があります(詳細はこちら)。
この期限を守らなかった場合、どういう取扱いになるかについては、現状では、令和5年3月31日までに登録申請書を提出できなかったことにつき「困難な事情」があるかどうかが問われます。
(1) 困難な事情がある場合
困難な事情がある場合には、特別な取扱いがあり、登録申請書に「困難な事情」を記載しておけば、令和5年10月1日を登録日とすることが可能となります。
具体的には、令和5年9月30日までの間に登録申請書にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされます。
(2) 困難な事情がない場合
一方、困難な事情がない場合は、原則どおりの取扱いで、普通の(=「困難な事情」の記載がない)登録申請書を提出し、令和5年10月2日以後に登録を受けた場合、登録日は、その登録を受けた日となります。
これが見直し前の状況です。
(3) 困難な事情とは
ちなみに、上記の「困難な事情」については、一応通達に定めがあって、期限までに登録申請書を提出することにつき困難な事情があれば、その困難の度合いを問わず、上記の措置を適⽤することとされています。
思いつくところでは、「犬が登録申請書を食べてしまいました」とかですかね。
2. 見直しにより困難な事情が無くてもOKに
異様に前置きが長くなりましたが、大綱では、インボイス制度の登録期限について、以下のような見直しに言及しています。
つまり、登録申請書に「困難な事情」を記載しなくても、当初の期限後(2023年4月以降)に登録申請が可能になるということだと思います(たぶん)。
最初は提出期限を厳し目に設定しておいて、後で徐々に緩めていくという常套手段っぽいですね。
この話題はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。