電子帳簿保存法(電子取引):令和5年度税制改正の方向性-猶予措置と検索機能
週末ですが、この時期特有の税制改正のお話です。
令和5年度税制改正において、電子帳簿保存法の関係では、消費税のインボイス制度などとともに、「納税環境整備」の一環としての改正が入りそうです。
まだ方向性は固まっていないようですが、重要そうなのは、電子取引のデータ保存の部分でしょうか。
Table of Contents
1. システム対応が間に合わなかった事業者等への対応
電子取引のデータ保存について、現状は以下の記事のとおりです。
現時点で存在する猶予措置は来年(2023年)の年末までのものですが、令和5年度税制改正で、新たな猶予措置が整備される方向性のようです(本則として)。
新たな猶予措置の大まかなイメージは以下のとおりです。
システム対応を相当の理由により行うことができなかった事業者
(税務署長が相当の理由があると認める場合)
内容:
出力書面の保存+データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば…
検索機能の確保の要件等を不要としてそのデータ保存が可能
従来どおり書面で保存してるけど、「データの保存もあるから、電子帳簿保存法対応!」みたいなテイストなんでしょうか。
2. 検索機能の確保の要件の見直し
電子取引のデータ保存について、検索機能の確保の要件は以下のとおりです。
(1) 要件の緩和
これについて、以下の求めに応じることができるようにしていれば、検索機能の確保の要件を充足している扱いになる方向性のようです。
上記1との関係はよくわかりませんが、こっちは猶予措置という位置付けではなく、また、あくまでも「検索機能の確保の要件」についてだけのお話なのかもしれません。
(2) 売上高基準:1,000万円以下→5,000万円以下
もう1つ、現状は、全ての検索機能の確保の要件が不要となる売上高基準は1,000万円以下です(以下の記事参照)。
この売上高基準が「5,000万円以下」まで引き上げられる方向性のようです。
3. やっぱりよくわからない
まだよくわからないことも多いのですが、まずは、上記1の猶予措置を適用するか否かの判断があるんだと思います。
そして、それを適用しない場合に、上記2の検索機能の確保の要件(緩和)が影響してくる感じでしょうか。こっちは、税務署長が相当の理由があると認めるかどうかは関係なしで。
税務通信の解説待ちですね。
【2022年12月追記】
これらの内容は、令和5年度与党税制改正大綱に反映されています(それぞれ以下の記事です)。
電子帳簿保存法(電子取引):2024年以降も新たな猶予措置(令和5年度税制改正大綱)
電子帳簿保存法(電子取引):検索機能等の保存要件の緩和(令和5年度税制改正大綱)
とりあえずここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。