インボイス制度:下請業者が確認した出来高検収書による仕入税額控除
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
2022年11月に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂され(詳細はこちら)、そこで新たに追加された項目について。
今回のテーマは、出来高検収書による仕入税額控除です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 出来高検収書による仕入税額控除
出来高検収書による仕入税額控除ということで、まず、Q&Aの設定は以下のとおりです。
Qとしては、「適格請求書等保存方式において、出来高検収書により仕入税額控除の適用を受けることは可能か」という内容です。
2. 現行制度と同じ
この点、現行制度では、通達により、建設工事を請け負った事業者(「元請業者」)が作成した出来高検収書を、下請業者に記載事項の確認を受けた上で保存することにより、仕入税額控除の適用を受けることが認められています。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)においても、この取扱いに変更はないことがQ&Aで確認されています。
すなわち、取引の相手方である下請業者が適格請求書発行事業者であることが前提になりますが、現在作成している出来高検収書を(インボイス制度における)仕入明細書等の記載事項を満たすものとして、下請業者の確認を受けることにより、インボイス制度においても、出来高検収書により仕入税額控除を行うことができるということです。
当然のことですが、この場合の出来高検収書は、仕入明細書等の記載事項を満たす必要があります(仕入明細書等の記載事項はこちら)。
3. 下請業者が請求書を発行する場合
Q&Aでは、上記の形とは異なり、元請業者が出来高検収書を下請業者に交付し、それに基づき下請業者が請求書を作成・交付する場合の取扱いについても言及があります。
その請求書で仕入税額控除の適用を受ける場合には、それが適格請求書の記載事項を満たしている必要がある、ということだけの話なんですけど。
4. 下請業者が適格請求書発行事業者でなくなった場合の留意点
ここまでは、「これ何のためのQなのかな」と思っていたのですが、1つだけ留意点が記載されています。
具体的には、下請業者が適格請求書発行事業者でなくなった場合、言い換えると、下請業者について、適格請求書の交付ができないことが判明した場合の取扱いです。
Q&Aでは、この場合、出来高検収書により仕入税額控除の対象とした消費税額を、「その交付ができないことが明らかとなる建設工事完了日の属する課税期間」における課税仕入れに係る消費税額から控除することとされています。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。