インボイス制度:免税事業者に対する課税事業者への転換要請の可否
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
免税事業者と取引する企業の立場で、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」に沿って、仕入先に課税事業者への転換を要請する場合について考えます。
Table of Contents
1. 免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A
まず、2022年1月に公表(→3月に改訂)された「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(財務省/公正取引委員会/経済産業省/中小企業庁/国土交通省)は、インボイス制度を契機に行う免税事業者との取引条件の見直し等に係る独占禁止法や下請法等における考え方を示したものです。
そのQ7では、以下のQがあり、対応するAでは、独占禁止法上で問題となるおそれがある行為について、一応具体的な考え方が示されています(こちら)。
Q7 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。
2. 前提条件
今回は、そのうち「仕入先に課税事業者への転換を要請する場合」を扱いますが、Q&Aでは以下が前提になっています。
3. 要請自体はセーフ
課税事業者である企業が、インボイス制度に対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあるようです(私は個人的に観測していません)。
まず、このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題にならないとされています。
正直、このあたりはよくわかりません。
個人的には、仕入先が免税事業者を選択しようが課税事業者を選択しようが、それは仕入先の自由であって、いずれの場合でも同じ(税抜)価格で取引すればそれでよいように思います。仕入先に「課税事業者になってください。適格請求書発行事業者として登録してください」と要請するのは変な気がするなあ。
まあ、要請するだけなら別に構わないのかもしれませんが。
4. 要請がアウトになるケース
アウトになるのは、端的には、それが要請にとどまらないケースのようです。
Q&Aでは、例えば、以下のように一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上、問題となるおそれがあるとされています。
また、問題になりそうなケースについて、もうちょっと具体的に書いてあります(以下です)。
これは別にインボイス制度の導入に限った話じゃないですが、企業としては気を遣うべきところですね。
重要なのは、実質面だけじゃなくて、外観上も「免税事業者と十分に協議を行った」ことがわかるようにしておくこと、「自社の都合を押し付けて低い価格を設定した」と疑われる余地を残さないことくらいでしょうか。
このあたりは法務のお話なので、ご相談は弁護士さんへ。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。