電子帳簿保存法(スキャナ保存):どの時点から訂正削除履歴を残す必要があるか
今日も電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度のお話です。
引き続き、重要書類のスキャナ保存の要件の関係ということで、今回のテーマは、スキャンミスとバージョン管理の関係です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. バージョン管理(訂正削除履歴を確保しているシステム)
まず、スキャナ保存の要件であるバージョン管理は、以下を全て満たすものでなければなりません(詳細はこちら)。
② 更新処理ができるのは一番新しいバージョンのみとすること
③ 削除は物理的に行わず、削除フラグを立てるなど形式的に行うこととし、全ての版及び訂正した場合は訂正前の内容が確認できること
④ 削除されたデータについても検索を行うことができること
2. スキャンミスの履歴は残す必要があるのか
これはこれでいいのですが、これに関してよく議論になっていたのがスキャンミスの取扱いです。
単純にちゃんとスキャンできていないものとか、もとの書類自体がNGで差し替えが必要になる場合とか、そういう場合に、どこまで履歴を残す必要があるのかということです。
ここは個人的によくわからなかったところなのですが、この点、『租税研究』の令和3年11月号の当局解説っぽいもの(財務省の方と国税庁の方)の質疑応答のところで答え(らしきもの)が書いてありました。
3. 当局解説っぽいものの質疑応答
まず、質疑応答における、具体的な質問内容は以下のとおりです(適当に要約してます)。
これ、めちゃくちゃいい質問だと思います(聞いてくれてありがたい)。
でも、これに対する回答は、まず「具体的な場面によるので、画一的な回答は難しい」とのことです。
ただ、「スキャン時に紙が折れ曲がってしまってすぐに読み取り直したような場合」のように、単純なスキャンミスについてはセーフのようで、従来から「当初のスキャナ画像は訂正・削除履歴を付さずに消去して構わない」という取扱いになっていたそうです。
それ以上の情報となると、ちょっと歯切れが悪いのですが、以下のような情報も提供されています。
4. 結局はっきりはわからない
質問にある「社内の承認フロー上で指摘を受けて差し替えたもの」はどう扱えばいいんでしょうね。
不完全燃焼ではありますが、私の読解力では、「スキャンミスしただけなら、削除してしまって大丈夫」という以上のことは読み取れませんでした。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。